バイオリン協奏曲の難易度を徹底解説!レベル別おすすめ曲とステップアップの指針

バイオリン協奏曲の難易度を徹底解説!レベル別おすすめ曲とステップアップの指針
バイオリン協奏曲の難易度を徹底解説!レベル別おすすめ曲とステップアップの指針
名曲解説・楽譜

バイオリンを習い始めて基礎練習を積み重ねていくと、いつかは憧れの「協奏曲(コンチェルト)」を弾いてみたいという目標を持つ方が多いのではないでしょうか。オーケストラをバックに、ソリストとして華やかに旋律を奏でる姿は、バイオリンを愛するすべての人にとっての夢といっても過言ではありません。

しかし、いざ協奏曲に挑戦しようと思っても、星の数ほどある楽曲の中から自分のレベルに合ったものを選ぶのはなかなか難しいものです。「有名なあの曲はどれくらい難しいの?」「今の実力で挑戦できる協奏曲は?」といった疑問を持つことも多いでしょう。無理をして難しすぎる曲に挑むと、変な癖がついてしまったり、挫折の原因になったりすることもあります。

そこで本記事では、バイオリン協奏曲の難易度について、初心者向けの学習用作品からプロが演奏する超難関曲まで、順を追って詳しく解説していきます。それぞれの曲が持つ技術的な課題や音楽的な魅力、そしてステップアップのための適切な順序を知ることで、これからの練習計画がより明確で楽しいものになるはずです。あなたのバイオリンライフをより豊かにするためのヒントとして、ぜひ役立ててください。

バイオリン協奏曲の難易度とは?判断基準を知ろう

バイオリン協奏曲の難易度を判断するためには、いくつかの重要な要素を理解しておく必要があります。単に「速いから難しい」「音が細かいから難しい」といった表面的なことだけでなく、バイオリン演奏における複合的な要素が絡み合ってグレードが決まってくるのです。

ここでは、一般的にどのような基準で難易度が測られているのか、そのポイントを詳しく見ていきましょう。これらの基準を知っておくことで、楽譜を見たときにおおよそのレベル感を自分で掴めるようになります。

技術的な難易度:左手のフィンガリングと右手のボウイング

まず最もわかりやすい指標となるのが、左手と右手に求められる技術的なレベルです。左手に関しては、使用するポジションの範囲が大きな目安となります。初級の協奏曲では第1ポジションから第3ポジション程度までが中心ですが、難易度が上がるとハイポジション(第7ポジション以上)が頻繁に登場し、指板の端まで使うような音域の広さが求められます。

また、左手の技術で特に難易度を左右するのが「重音(ダブルストップ)」です。2つの音を同時に鳴らす重音は、正確な音程を取るのが非常に難しく、3度、6度、8度(オクターブ)、さらには10度といった広い音程の重音が連続するパッセージは、上級者向けの曲に多く見られます。これに加えて、指を細かく動かすトリルや、左手で弦をはじくピチカートなどの特殊奏法も難易度に関わります。

一方、右手のボウイング(弓使い)も同様に重要です。滑らかに歌うレガートはもちろんのこと、弓を飛ばすスピッカート、一弓で多くの音を刻むスタッカート、弦を飛び越える移弦の速さなど、右手のコントロール能力が曲の完成度を大きく左右します。特にロマン派以降の協奏曲では、ダイナミックレンジ(音量の幅)を広く取る必要があり、右手の圧力と速度の繊細な調整が不可欠となります。

音楽的な表現力の要求度

技術的に音が並べられるようになったとしても、それだけで「弾けた」ことにならないのがクラシック音楽の奥深いところです。協奏曲の難易度を語る上で、この「音楽的な表現力」の要求度は無視できません。楽譜に書かれた音符を正確に弾く技術(メカニック)と、作曲家の意図を汲み取って歌い上げる表現力は、車の両輪のような関係です。

例えば、モーツァルトの協奏曲は、音の数だけで言えばロマン派の曲よりも少なく、一見簡単そうに見えることがあります。しかし、ごまかしの利かないシンプルな旋律であるがゆえに、音色の美しさやフレーズの処理、リズムの軽やかさといったセンスが問われ、プロの演奏家でも「モーツァルトが一番怖い」と言うことがあるほどです。

また、時代背景によるスタイルの違いも難易度に関係します。バロック音楽では厳格なテンポと整った様式美が求められる一方、ロマン派では「ルバート」と呼ばれるテンポの揺らし方や、感情を乗せた激しい表現が必要になります。自分の感性を楽器に乗せて聴衆に届ける能力、それが上級レベルの曲ではより強く求められるのです。

曲の長さと演奏に必要なスタミナ

協奏曲は、一般的に「急・緩・急」の3つの楽章で構成されていることが多く、全曲を通して演奏すると20分から40分、長いものでは50分近くかかります。これだけの長時間を、高い集中力を保ったまま弾き切るには、相応の体力と精神力(スタミナ)が必要です。

学習用の協奏曲(スチューデント・コンチェルト)の多くは、単一楽章で構成されていたり、全楽章でも10分〜15分程度と短めに作られていたりします。これは学習者の集中力が続く範囲で設計されているためです。しかし、本格的な協奏曲へステップアップすると、第1楽章だけで20分近くあるような大曲に挑むことになります。

ソロパートを弾き続けるだけでなく、オーケストラの前奏や間奏の間も音楽の流れを止めずに待機し、自分の出番で瞬時にトップギアに入れる瞬発力も求められます。特にチャイコフスキーやブラームスのような重量級の協奏曲では、最後まで音が痩せないように右腕の重みを乗せ続ける必要があり、演奏後の疲労感はスポーツにも匹敵します。この「体力的なハードル」も、難易度を決定づける大きな要因の一つです。

オーケストラとのアンサンブル能力

協奏曲の最大の特徴は、オーケストラ(またはピアノ伴奏)との共演であるという点です。一人で弾く独奏曲やエチュードとは異なり、他の楽器の音を聴きながら自分の音を調和させる「アンサンブル能力」が不可欠です。これもまた、曲によって難易度が大きく異なります。

初心者向けの協奏曲では、伴奏がソリストのメロディをしっかりとサポートしてくれる作りになっており、拍子も分かりやすく書かれています。しかし、難易度が高い曲になると、オーケストラとソリストが複雑に絡み合い、掛け合いをしたり、リズムが意図的にずらされていたり(ヘミオラやシンコペーションなど)、入り組んだ構造になっていることが増えます。

また、カデンツァ(ソリストが一人で技巧を披露する即興的な部分)の終わりで指揮者とタイミングを合わせてオーケストラが入ってくる瞬間など、阿吽の呼吸が求められる場面も多々あります。自分が主役として曲を引っ張りつつも、バックの音を聴いてテンポ感や音程感を共有する能力は、多くの経験と高度な耳の良さを必要とします。このアンサンブルの難しさも、協奏曲のグレードを見極める大切なポイントです。

初級から中級者におすすめのバイオリン協奏曲と難易度

バイオリンを習い始めて数年が経ち、基礎的なポジション移動やヴィブラートができるようになってくると、先生から協奏曲の楽譜を渡されることがあります。これらは一般的に「学習用協奏曲」と呼ばれ、技術の向上を目的として書かれたものですが、美しい旋律を持つ名曲もたくさんあります。

ここでは、バイオリン学習者が最初に通る道として親しまれている、初級から中級入り口レベルの協奏曲を紹介します。これらを順にこなしていくことで、将来の大曲に挑むための基礎体力が養われます。

ザイツやヴィヴァルディなどの学習用協奏曲

バイオリン学習者が「初めての協奏曲」として出会うことが多いのが、ザイツ(Seitz)の作品です。特に「学生協奏曲 第2番 ト長調」や「第5番 ニ長調」は、鈴木メソッドなどの教本でも早い段階で取り上げられます。これらの曲は、第1ポジションを中心に書かれており、時折第3ポジションが出てくる程度なので、ポジション移動の入門として最適です。

ザイツの魅力は、技術的に易しいながらも、しっかりと「協奏曲らしい」華やかな響きがすることです。重音も単純なものが多く、しっかりとした音を出す練習になります。また、リズムも明快で元気な曲調が多いため、子供から大人まで楽しく弾くことができます。

次によく取り組まれるのが、ヴィヴァルディの「バイオリン協奏曲 イ短調(a-moll)作品3-6」です。バロック音楽特有の整然とした形式美があり、速いパッセージでの弓のコントロールや、安定したテンポ感を養うのにうってつけです。特に第1楽章の冒頭は有名で、発表会でも頻繁に演奏されます。第3楽章のスピッカート的な動きなど、右手首の柔軟性も鍛えられます。

ヴィヴァルディには他にも「ト短調(g-moll)」など多くの協奏曲がありますが、このイ短調はバイオリン学習の通過儀礼とも言える重要な一曲です。まずはここを目標に基礎練習を頑張るという方も多いでしょう。

アッコーライ:バイオリン協奏曲 イ短調

ヴィヴァルディなどを卒業し、よりロマンティックな表現に挑戦したい段階で登場するのが、アッコーライ(Accolay)の「バイオリン協奏曲 第1番 イ短調」です。この曲は単一楽章で書かれており、演奏時間は10分程度ですが、その中身は非常に濃く、ドラマチックな展開が魅力です。

難易度的には、これまでの学習用協奏曲よりも一段階上がります。まず、ハイポジションの使用頻度が増え、指板の高い位置で正確な音程を取る技術が求められます。また、冒頭のG線での力強い旋律や、中盤の歌い上げるようなカンタービレ(歌うように)の部分では、豊かなヴィブラートと弓の使い分けが必要です。

さらに、曲の後半には細かなアルペジオや、少し技巧的なカデンツァのようなパッセージも登場します。技術的な課題と音楽的な表現力の両方をバランスよく学べるため、中級への架け橋として非常に優秀な教材です。発表会での演奏効果も高く、「バイオリンを弾いている!」という実感を強く得られる曲の一つと言えるでしょう。

ベリオ:バレエの情景

シャルル=オーギュスト・ド・ベリオは、19世紀に活躍したベルギーのバイオリニスト兼作曲家です。彼が残した「バレエの情景(Scène de Ballet)作品100」は、厳密には協奏曲というタイトルではありませんが、協奏曲と同様の規模とスタイルを持ち、学習者にとって欠かせないレパートリーとなっています。

この曲の難易度は中級レベルに位置し、アッコーライよりもさらに華やかで技巧的な要素が増えます。タイトルの通り、バレエ音楽のような軽快さと優雅さを併せ持っており、踊るようなリズム感が求められます。特に、「ボウイングの多彩さ」を学ぶのに適しており、冒頭の鋭い付点リズムや、中間部の美しいワルツ、終盤の急速なパッセージなど、場面ごとに弓の使い方をガラリと変える必要があります。

また、装飾音符やハーモニクス(フラジオレット)、左手のピチカートといった特殊な奏法も効果的に使われており、これらをいかにスマートにこなすかが腕の見せ所です。単に音を弾くだけでなく、「おしゃれに」「粋に」弾くという感覚を養うことができるため、表現の幅を広げたい時期にぴったりの一曲です。

中級から上級へステップアップするための協奏曲

ここからは、いよいよ本格的なクラシックのレパートリーに入っていきます。これらの曲は、音楽大学の入試課題曲やコンクールの中学生部門などで頻繁に演奏されるレベルであり、アマチュア奏者にとっては一つの大きな到達点とも言えるでしょう。

技術的な要求はもちろんのこと、作曲家ごとの様式感や深い音楽性が求められます。時間をかけてじっくりと取り組む価値のある名曲ばかりです。

モーツァルト:バイオリン協奏曲第3番・第4番・第5番

モーツァルトは全部で5曲のバイオリン協奏曲を残していますが、現在演奏会で頻繁に取り上げられるのは第3番、第4番、第5番の3曲です。これらは「中級レベル」に分類されることが多いですが、前述の通り、音楽的な難易度は極めて高く、プロのオーディションでも必ずと言っていいほど課題曲になります。

第3番 ト長調(K.216)
「ストラスブール」とも呼ばれるこの曲は、明るくチャーミングな旋律が特徴です。3曲の中では比較的取り組みやすいとされ、最初にモーツァルトを学ぶ際に選ばれることが多いです。第1楽章の軽やかさ、第2楽章の天国的な美しさが聴きどころです。

第4番 ニ長調(K.218)
「軍隊」という愛称で呼ばれることもあり、冒頭のファンファーレのような力強さと、その後の流れるような優美さの対比が魅力です。技術的には第3番よりやや難易度が上がり、高音域での安定性や、速いパッセージでの粒立ちの良さが求められます。

第5番 イ長調(K.219)「トルコ風」
最も規模が大きく、華やかな一曲です。第3楽章の中間部でトルコ軍楽風の激しい短調のメロディが現れることからこの名がつきました。全楽章を通じて高い技術と構成力が必要で、3曲の中では最も難易度が高いとされます。

モーツァルトの協奏曲を弾く際は、「真珠の首飾り」に例えられるような、一音一音が美しく揃った音色(粒立ち)を目指すことが大切です。ロマン派のように弓を強く押し付けるのではなく、弓のスピードと接触点をコントロールして、クリアで透明感のある響きを作らなければなりません。

ブルッフ:バイオリン協奏曲 第1番

ロマン派の協奏曲への入り口として、世界中で最も愛されている曲の一つが、マックス・ブルッフの「バイオリン協奏曲 第1番 ト短調」です。この曲は、バイオリンという楽器が持つ「歌う性質」を最大限に引き出しており、情熱的で甘美なメロディが全編にあふれています。

難易度としては、モーツァルトの次に学ぶことが多く、本格的な重音奏法や、G線での太く豊かな音色を学ぶのに最適です。第1楽章は、独奏バイオリンの重厚なカデンツァ風の導入から始まり、オーケストラと対話しながらドラマチックに進んでいきます。

第2楽章のアダージョは、バイオリン協奏曲史上屈指の美しい緩徐楽章と言われ、繊細なヴィブラートと息の長いボウイングコントロールが求められます。ここで聴衆を感動させられるかどうかが、奏者の表現力の見せ所です。第3楽章は一転してエネルギッシュな舞曲風となり、3度や6度、10度の重音が多用され、左手の拡張や跳躍といった技術的な課題が満載です。

メンデルスゾーン:バイオリン協奏曲 ホ短調

「メンコン」の愛称で親しまれ、ベートーヴェン、ブラームスと並んで「三大バイオリン協奏曲」の一つに数えられることもある傑作です(チャイコフスキーを加えて四大協奏曲とすることもあります)。冒頭のあまりにも有名な切ない旋律は、一度聴いたら忘れられません。

名曲中の名曲であるため非常に難しそうに思えますが、実は三大協奏曲の中では比較的取り組みやすい部類に入り、音大受験生や上級アマチュアが必ず通るレパートリーとなっています。しかし、それは「弾きやすい」という意味ではありません。

第1楽章冒頭の高音域でのオクターブ進行や、正確な音程とリズムが要求される急速なアルペジオなど、基礎技術の完成度が厳しく問われます。また、第3楽章は妖精が飛び回るような軽快さとスピードが必要で、右手首の柔軟なスピッカートや、左手との完璧なコーディネーションがないと、曲の持つ軽妙さを表現できません。

この曲をマスターすることは、上級者への仲間入りを果たした証とも言えるでしょう。

サン=サーンス:バイオリン協奏曲 第3番

フランスの作曲家サン=サーンスの「バイオリン協奏曲 第3番 ロ短調」も、中級から上級へのステップアップ期に重要な位置を占める作品です。ラロの「スペイン交響曲」と並んで、フランス系の華麗なバイオリン音楽を代表する一曲です。

この曲の難易度は、メンデルスゾーンと同等か、あるいは要素によってはそれ以上に感じられる部分もあります。最大の特徴は、劇的な力強さと繊細な美しさが同居している点です。第1楽章の冒頭、G線だけで奏でられる情熱的なテーマは、弓の圧力をしっかりとかけて、深みのある音を出す必要があります。

第2楽章の最後に登場するハーモニクス(フラジオレット)の連続は、非常に美しく幻想的ですが、音程を外しやすい難所として知られています。そして第3楽章では、冒頭の華々しいカデンツァ風のソロや、中間部のコラール風の美しい旋律、終盤の技巧的な駆け上がりなど、多彩な要素が詰め込まれています。

サン=サーンスの作品は、構成がしっかりしており演奏効果が高いため、コンクールや発表会でも非常に人気があります。右手のボウイング技術だけでなく、左手のポジション移動の正確さや、音色のパレットを増やすための良い課題となるでしょう。

上級者が目指す難関バイオリン協奏曲の世界

ここから紹介するのは、プロのバイオリニストがリサイタルや協奏曲の夕べでメインプログラムとして演奏するような、難易度S級の作品群です。これらの曲を弾きこなすには、あらゆる基礎技術が完成されていることは前提であり、その上で強靭な精神力と体力、そして独自の芸術的解釈が求められます。

アマチュア奏者にとっては「いつかは弾きたい夢の曲」であり、音大生にとっては卒業試験やプロオケのオーディションなどで勝負するための武器となる曲たちです。

チャイコフスキー:バイオリン協奏曲 ニ長調

チャイコフスキーのバイオリン協奏曲は、その華やかさと親しみやすいメロディから絶大な人気を誇りますが、完成当時は「演奏不可能」と評されたほどの難曲です。冒頭のオーケストラによる序奏から、ソロバイオリンがカデンツァ風に入ってくる瞬間は鳥肌ものです。

この曲の難しさは、とにかく「派手で体力がいる」点にあります。第1楽章の中盤にある長大なカデンツァは、重音、アルペジオ、トリル、高音域への跳躍など、バイオリンの超絶技巧のオンパレードです。また、オーケストラが全奏で盛り上がった直後に、負けないくらいの音量とテンションでソロが入る場面が多く、右手のパワーコントロールが極めて重要になります。

第3楽章は、ロシアの民族舞踊のような激しいリズムで突き進みます。ここでは超高速のスピッカートや、指が絡まりそうな細かいパッセージが延々と続き、最後までテンポを落とさずに弾き切るには相当なスタミナが必要です。しかし、その分弾ききった時の達成感は他の曲に代えがたいものがあります。

シベリウス:バイオリン協奏曲 ニ短調

北欧フィンランドの冷たく澄んだ空気を思わせる、独特の緊張感を持った名曲です。シベリウス自身がバイオリニストを目指していたこともあり、楽器の機能を極限まで追求した書き方になっていますが、それは同時に演奏者にとって過酷な要求でもあります。

シベリウスの難易度が高い理由は、技術的な難しさに加えて、独特の「音色」を作るのが難しい点にあります。冒頭の極寒の湖面のようなピアニシモから、第1楽章後半の激しい重音の連続まで、音の密度を常に高く保つ必要があります。特に重音のパッセージは指の拡張が多く、手の小さい奏者には物理的なハードルが高い曲でもあります。

第3楽章は「北極熊のポロネーズ」とも形容される独特のリズムで、重たい低音と鋭い高音が交錯します。技巧的でありながら、決してショーアップされた軽さにならず、常に内面的な深さを失わないように演奏することが求められる、精神的にもタフな作品です。

ブラームス:バイオリン協奏曲 ニ長調

「バイオリン独奏付きの交響曲」と称されるほど、オーケストラパートが分厚く、構造が堅牢な作品です。ベートーヴェンの協奏曲の系譜を継ぐ、ドイツロマン派の最高峰に位置します。

ブラームスの難しさは、「バイオリンらしくない」と言われる運指にあります。ピアニストであったブラームスが書いた和音進行は、バイオリンの指板上で押さえるには非常に不自然で無理のある形が多く、音程を安定させるだけで一苦労です。3重音や4重音が連続する箇所も多く、左手の握力と柔軟性が試されます。

また、巨大なオーケストラの響きに埋もれない、太くて芯のある音(ソリストとしての音圧)を出し続ける必要があります。小手先のテクニックではなく、身体全体を使った重厚なボウイングができて初めて、ブラームスの音楽として成立します。技術、体力、構成力、すべてにおいて最高レベルが要求される、まさに王者の協奏曲です。

パガニーニ:バイオリン協奏曲 第1番

「悪魔に魂を売って技術を手に入れた」という伝説を持つパガニーニが、自らの超絶技巧を披露するために作曲した協奏曲です。音楽的な深みや構造美を追求したブラームスなどとは対照的に、この曲は純粋に「バイオリンでこんな凄いことができるんだ!」という驚きを追求したエンターテインメント作品です。

難易度の種類が他とは異なり、特殊奏法のオンパレードです。左手のピチカート、超高音域でのフラジオレット、2オクターブ以上の跳躍、指を極限まで広げる10度の重音、連続する3度のトリルなど、サーカスのような技巧が次々と現れます。特に有名な「ダブルハーモニクス(2つの音を同時にフラジオレットで鳴らす)」などは、少しでも指がずれると音が鳴らないため、極めて精密なコントロールが必要です。

この曲を弾くには、基礎技術の延長線上にある努力だけでなく、パガニーニ特有の特殊技術を専門的に習得する必要があります。聴衆をあっと言わせる華やかさにおいては右に出るものがない、ヴィルトゥオーゾ(達人)のための協奏曲です。

難易度表の活用と自分に合った選曲のコツ

ここまで様々な協奏曲を紹介してきましたが、実際に自分が取り組む曲を選ぶ際には、どのように決めればよいのでしょうか。世の中には「難易度ランキング」や「グレード表」といったものが存在しますが、それらを鵜呑みにせず、自分の状況に合わせて活用することが大切です。

難易度ランキングやグレード表の見方

インターネット上や教本には、バイオリン協奏曲を難易度別にランク付けした表が見つかることがあります。これらは大まかな目安として非常に便利ですが、作成者の主観や基準によって順位が入れ替わることがある点に注意が必要です。

例えば、「技術的には難しいが、音楽的には分かりやすい曲」と「音符は少ないが、表現が極めて難しい曲」をどう比較するかは意見が分かれます。モーツァルトがチャイコフスキーよりも下のランクに置かれることが一般的ですが、プロの中には「モーツァルトの方が神経を使う」と言う人もいます。

ランキングを見る際は、それが「音符を追う難しさ(譜読みの難易度)」なのか、「人前で完成度高く演奏する難易度」なのかを考慮すると良いでしょう。学習段階では前者を参考にし、発表会やコンクールでは後者を意識するのが賢い見方です。

先生との相談と目標設定

独学で曲を選んで練習するのも楽しみの一つですが、協奏曲に関しては、指導者の意見を仰ぐことが最も安全で近道です。先生は、あなたの現在の技術的な強みと弱点(例:移弦は得意だが、ハイポジションの音程が甘いなど)を客観的に把握しています。

「次はメンデルスゾーンが弾きたいです」と希望を伝えたとき、先生が「その前にブルッフをやっておこう」と提案するには理由があります。ブルッフで重音やG線の歌い方を学んでからの方が、メンデルスゾーンで挫折せずに済むという判断があるからです。

また、長期的な目標を設定することも大切です。「3年後にチャイコフスキーを弾くために、今年はアッコーライとモーツァルトを仕上げる」といったロードマップを描くことで、日々の基礎練習(スケールやエチュード)へのモチベーションも維持しやすくなります。

「弾きたい曲」と「弾ける曲」のバランス

選曲において最も悩ましいのが、憧れの「弾きたい曲」と、現状の実力で「弾ける曲(学ぶべき曲)」のギャップです。背伸びをして難しすぎる曲に挑戦するのは、モチベーションアップに繋がる一方で、リスクも伴います。

実力とかけ離れた曲を無理やり弾こうとすると、身体に余計な力が入り、腱鞘炎などの故障を引き起こす可能性があります。また、音程やリズムをごまかして弾く癖がついてしまい、後で修正するのが大変になることもあります。

おすすめの方法は、「メインの課題曲」として実力相応の協奏曲に取り組みつつ、「ご褒美練習」として憧れの曲の有名なフレーズだけを少しさらってみることです。これなら、基礎をおろそかにせず、夢に向かって楽しむことができます。ステップアップの階段を一段ずつ確実に登っていくことが、結果として憧れの名曲への一番の近道となるのです。

まとめ:バイオリン協奏曲の難易度を理解して楽しくステップアップ

まとめ
まとめ

バイオリン協奏曲の難易度は、単に指が速く動くかどうかだけでなく、音楽的な表現の深さ、曲の長さ、オーケストラとのアンサンブル能力など、多岐にわたる要素で決まります。ザイツやヴィヴァルディといった学習用協奏曲から始まり、モーツァルトやブルッフを経て、チャイコフスキーやブラームスといった大曲へと至る道は、まさにバイオリン学習者の成長の歴史そのものです。

大切なのは、今の自分がどの段階にいて、次に何を学べば良いのかを知ることです。難易度という指標をうまく活用し、指導者と相談しながら無理のない計画を立てることで、挫折することなく着実に上達していくことができます。一つひとつの協奏曲には、そのレベルに応じた学びと、演奏する喜びが詰まっています。

憧れのあの曲をステージで堂々と弾き切る未来を想像しながら、まずは目の前の一曲とじっくり向き合ってみてください。その積み重ねが、あなたを素晴らしいバイオリン演奏の世界へと導いてくれるはずです。

タイトルとURLをコピーしました