バイオリンのフラジオ(フラジオレット)表記を完全ガイド!○と◇の違いや読み方

バイオリンのフラジオ(フラジオレット)表記を完全ガイド!○と◇の違いや読み方
バイオリンのフラジオ(フラジオレット)表記を完全ガイド!○と◇の違いや読み方
弾き方・練習法

バイオリンの楽譜を見ていると、音符の上に小さな「〇(丸)」がついていたり、音符の頭が「◇(ひし形)」になっていたりすることはありませんか?これらは「フラジオレット(ハーモニクス)」と呼ばれる特殊な奏法を指示する記号です。透明感のある美しい音色が出る憧れのテクニックですが、楽譜の書き方がいくつか種類あり、初心者にとっては「どこを押さえればいいの?」「何の音が出るの?」と混乱しやすいポイントでもあります。

この記事では、バイオリンのフラジオ表記の基本から、実践的な読み方、そしてきれいに音を出すためのコツまでをやさしく解説します。記号の意味を正しく理解すれば、楽譜を読むのがもっと楽しくなり、演奏の表現力もぐっと広がりますよ。

バイオリンのフラジオ(フラジオレット)表記の基本とは

バイオリンの「フラジオ」とは、正式には「フラジオレット(Flageolet)」、または「ハーモニクス(Harmonics)」と呼ばれる奏法のことです。弦を指板まで強く押さえ込まず、指の腹で弦に軽く触れる(タッチする)だけで弾くことで、倍音という高く澄んだ音を出します。

この奏法が出てきたとき、楽譜には主に2種類の記号が使われます。まずはこの2つの大きな違いを知っておきましょう。

「〇(丸)」と「◇(ひし形)」の記号の違い

フラジオレットの表記には、大きく分けて以下の2つのパターンがあります。

1. 音符の上に「〇」がついている場合

これは「自然フラジオレット」によく使われる記号です。基本的には「その音を開放弦の倍音で出してください」という意味、もしくは「実際に出る音(実音)」を示している場合があります。

2. 音符の頭が「◇」になっている場合

これは「指で軽く触れる場所(タッチポイント)」を示しています。このひし形の位置に指を置けば、目的の音が出るという仕組みです。

この2つの記号が使い分けられていることが、読み方を難しくしている原因の一つです。しかし、基本的には「〇は種類や音高」、「◇は指の位置」を表すことが多いと覚えておくと整理しやすくなります。

自然フラジオと人工フラジオ

表記を理解する上で、もう一つ知っておくべきなのが奏法の種類です。フラジオレットには「自然フラジオレット」と「人工フラジオレット」の2種類があります。

自然フラジオレットは、開放弦(何も押さえていない弦)の特定のポイントに指を触れて音を出します。一方、人工フラジオレットは、人差し指で弦をしっかり押さえ、小指などで別の場所を触れて音を出します。それぞれ楽譜での書かれ方が異なるため、次のセクションから詳しく見ていきましょう。

なぜフラジオレットを使うのか?

作曲家がこの奏法を指定するには理由があります。一つは、通常の奏法では出せない「笛のような透明感のある音色」が欲しい場合。もう一つは、高い音を弾く際に、左手を大きく移動(シフトチェンジ)させなくても、低いポジションのまま高い音を出せるという「技術的な利便性」のためです。

初心者でもわかる!自然フラジオレットの表記と弾き方

自然フラジオレットは、開放弦を利用するため、比較的出しやすく初心者の方でも挑戦しやすいテクニックです。楽譜での表記パターンを見ていきましょう。

「◇(ひし形)」で指の位置が指定されている場合

最もわかりやすいのがこのパターンです。楽譜には、通常の音符ではなく、頭がひし形(◇)の音符が書かれています。これは「その音程の場所を指で軽く触れてください」という指示です。

例えば、A線(ラ)の譜面上の「レ」の位置にひし形の音符があったとします。この場合、「レ」の音が出るわけではありません。「レ」を押さえる場所(第3ポジションの1の指など)に指を軽く触れて弾くことで、実際には「2オクターブ上のラ」の音が出ます。

「〇(丸)」で出る音が指定されている場合

音符の上に小さな「〇」がついている場合、これは「この音をフラジオレットで出してください」という意味になります。多くの場合、その音程そのもの(実音)が書かれています。

例えば、高い「ミ」の音符に「〇」がついている場合、E線の開放弦を使っても良いですし、A線の高い位置を使っても構いません。しかし、通常は最も弾きやすい「開放弦を使った自然フラジオレット」を選択します。

よく使われる自然フラジオレットの場所

自然フラジオレットには、弦の長さを「半分」や「3分の1」にするポイント(節)があります。どこを触れるとどんな音が出るのか、代表的なものを表にまとめました。

触れる場所(目安) 楽譜上のひし形の位置 実際に出る音(実音)
弦のちょうど真ん中 オクターブ上の音 開放弦の1オクターブ上
第1ポジションの小指の位置 完全5度上の音 開放弦の1オクターブ+5度上
第3ポジションの1の指 完全4度上の音 開放弦の2オクターブ上
第3ポジションの3の指 長3度上の音(低い方) 開放弦の2オクターブ+長3度上

このように、楽譜に書かれている「ひし形」の位置と、実際に耳に聞こえる「実音」は異なります。最初は戸惑うかもしれませんが、「ひし形はあくまで指を置く場所の地図」だと割り切って読むのがコツです。

少し高度な技術?人工フラジオレットの表記ルール

次に、中級者以上の曲で頻繁に登場する「人工フラジオレット」の表記について解説します。こちらは見た目が特徴的なので、一度覚えればすぐに見分けがつきます。

2つの音符が重なる「だるま」のような表記

人工フラジオレットの楽譜は、基本的に2つの音符が縦に並んで書かれています。

下の音符(通常の黒玉):人差し指(1の指)でしっかり押さえる音。

上の音符(ひし形◇):小指(4の指)で軽く触れる場所。

下は黒く塗りつぶされた普通の音符、その上にひし形の音符が乗っかっているため、雪だるまのような形に見えることもあります。この表記が出てきたら、「下をしっかり押さえて、上を軽く触る」と反応できるようにしましょう。

基本は「4度」の間隔

バイオリンの人工フラジオレットで最も一般的なのが、下の音と上のひし形の間隔が「完全4度」になっているものです。これは、1の指と4の指を使うと自然に押さえやすい間隔です。

この「4度タイプ」の人工フラジオレットを弾くと、下のしっかり押さえた音の「2オクターブ上」の音が鳴ります。例えば、1の指で「ラ」を押さえ、4の指で「レ」の位置に軽く触れると、さらに高い「ラ」の音が響きます。

指が届かない場合のコツ

「1の指と4の指が届かなくて苦しい」という悩みは多くの人が抱えます。人工フラジオレットを成功させるコツは、手首の形を少し変えることです。

ワンポイントアドバイス

親指の位置を少しネックの下の方へずらし、手首を内側に入れ込むようにすると、小指が届きやすくなります。また、1の指は指先ではなく、少し指の腹全体でべったりと押さえるようにすると安定感が増します。

無理に指を広げようとして手に力が入りすぎると、指が浮いてしまったり、音がかすれてしまったりします。リラックスして、手のひらの角度を調整してみてください。

珍しいフラジオ表記や特殊なケースを知ろう

ここまで紹介した基本形以外にも、時代や作曲家によって特殊な書き方がされることがあります。遭遇したときに慌てないよう、いくつかのパターンを知っておきましょう。

5度や3度の人工フラジオレット

先ほど「4度の間隔が基本」とお伝えしましたが、まれに「5度」や「長3度」「短3度」の間隔で指定されることがあります。

5度の場合(1の指と小指をさらに広げる):
出る音は、下の音の「1オクターブ+5度上」です。指をかなり広げる必要があるため、手の小さい人には難易度が高い技術です。

3度の場合(1の指と3の指など):
出る音は、下の音の「2オクターブ+3度上」など、非常に高い倍音になります。現代音楽や超絶技巧曲で見かけることがあります。

実音のみが書かれている場合

古い楽譜や、簡易的な楽譜では、人工フラジオレットであるにもかかわらず、実際に出る「高音の実音」だけが書かれ、そこに「〇」や「Flag.」「Harm.」という文字が添えられていることがあります。

この場合、演奏者は自分で「どの弦を使って、どの指使いで人工フラジオレットにするか」を考えなければなりません。多くの場合は4度タイプの人工フラジオレットに変換して演奏します。

グリッサンド・フラジオレット

音符と音符の間が線で結ばれ、その全てにフラジオレット記号がついている場合です。これは、指の形(1の指と4の指の距離)を保ったまま、指板の上を滑らせて音程を変えていく奏法です。「ヒュイーン」という幻想的な効果音が生まれます。

この表記があるときは、指の圧力を変えずに、幽霊が通るようなイメージでなめらかに手を動かすのがポイントです。

楽譜で迷わないためのチェックポイントと練習法

最後に、フラジオレットを習得し、楽譜を見て迷わず弾けるようになるための練習のヒントをご紹介します。

出版社による表記の揺れに注意

実は、楽譜の出版社によってフラジオレットの書き方が微妙に違うことがあります。特に「ひし形」が書かれている位置が、実際に指を置く場所なのか、それとも出る音を示しているのか(ごく稀にあります)、前後の文脈から判断が必要なケースもあります。

もし迷ったら、まずは「指を置く場所」として試してみて、曲のメロディとして不自然な音が鳴る場合は「実音表記」を疑ってみてください。

鉛筆での書き込みが上達への近道

プロの演奏家でも、フラジオレットの箇所にはわかりやすく書き込みをすることがあります。特におすすめなのが、以下の情報を書き込むことです。

・何番線(G線、D線など)を使うか
・どのポジションで取るか(1st、3rdなど)
・実際に出る音(実音)の音名

特に「実音」を小さくメモしておくと、耳で音程が合っているか確認しやすくなります。脳内で変換する時間を節約することで、演奏に集中できるようになります。

きれいな音色を出すための弓使い

左手の位置が合っているのに音が鳴らない場合、原因は右手(弓)にあることが多いです。フラジオレットをきれいに響かせるには、通常の音とは違う弓使いが必要です。

1. 弓のスピードを速くする
フラジオレットは、弓をゆっくり動かすと「ギー」という雑音が混じりやすくなります。サッと素早く弓を流すイメージで弾きましょう。

2. 駒寄りを弾く
指板の上ではなく、駒(ブリッジ)に近い場所を弾くと、倍音がはっきりと鳴りやすくなります。

3. 弓の圧力を抜く
ガリガリと押し付けるのは厳禁ですが、逆に浮かせすぎても鳴りません。表面を撫でるような、軽やかで均一な圧力を心がけてください。

まとめ:バイオリンのフラジオ表記をマスターして表現の幅を広げよう

まとめ
まとめ

バイオリンのフラジオ(フラジオレット)表記について、その種類や読み方を解説してきました。要点を振り返ってみましょう。

・「〇」は自然フラジオ、「◇」は指を置く位置を示すことが多い。

・自然フラジオは開放弦を使い、特定の節(真ん中や1/3など)に触れる。

・人工フラジオは「下をしっかり押さえ、上を軽く触れる」のが基本。

・最も一般的な人工フラジオは「4度」の間隔で押さえるもの。

・音が出にくいときは、左手の位置だけでなく、弓のスピードと場所を見直す。

最初は記号の解読に時間がかかるかもしれませんが、慣れてくれば「ここは透明感を出したいんだな」という作曲家の意図がすぐに読み取れるようになります。

フラジオレットは、バイオリンならではの魔法のような音色です。ぜひこの機会に表記のルールをマスターして、美しいハーモニクスを響かせてくださいね。

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