「バイオリンを始めたいけれど、どの教本を使えばいいのかわからない」「今の練習曲が難しすぎて、自分に合っているのか不安」そんな悩みをお持ちではありませんか?バイオリンの教本は、歴史ある名著から最新のメソッドまで数多く存在し、それぞれに特徴や目的が異なります。自分のレベルや目的に合った教本を選ぶことは、挫折せずに楽しく上達するための第一歩です。
この記事では、「バイオリン教本 レベル別」というキーワードで検索された方に向けて、初心者から上級者までのロードマップをわかりやすく解説します。定番の教本比較から、併用すべきエチュード(練習曲)の進め方まで、独学の方にも役立つ情報を網羅しました。あなたにぴったりの一冊を見つけて、憧れの音色への階段を一歩ずつ上っていきましょう。
バイオリン教本のレベル別ロードマップとは?

バイオリンの上達において、教本選びは単なる「楽譜選び」ではありません。それは、どのようなルートで技術を習得していくかという「地図」を選ぶようなものです。まずは、バイオリン学習の全体像と、レベルごとの到達目標について整理しておきましょう。
教本・エチュード・音階の「三種の神器」
ピアノのレッスンと同様に、バイオリンの練習でも一般的に3種類のテキストを併用して進めていきます。これらはそれぞれ役割が異なり、バランスよく組み合わせることで、偏りのない技術が身につきます。
1つ目は「教本(メソッド)」です。これは、新しい技術を段階的に学びながら、短い曲を通して実践していくメインのテキストです。2つ目は「エチュード(練習曲)」です。教本で出てきた技術を、より集中的に反復練習するためのドリル的な役割を果たします。そして3つ目が「音階教本(スケール)」です。バイオリンの命である「正しい音程」を取るための指の位置を、調性ごとに徹底的に叩き込むための基礎トレーニングです。
初心者のうちはメインの教本1冊だけで進むこともありますが、レベルが上がるにつれて、これら「三種の神器」を並行して練習することが上達の近道となります。
初級編:第1ポジションでの基礎固め
バイオリンを始めて最初に目指すのが、左手を棹(ネック)の先端近くに固定して弾く「第1ポジション」の習得です。この段階では、正しい姿勢、弓の持ち方(ボーイング)、そして正確な音程の取り方を学びます。
初級レベルの教本では、開放弦(指を押さえない音)から始まり、人差し指、中指、薬指、小指と順番に指を覚えていきます。また、全弓(弓の端から端まで使うこと)や半弓など、右手の使い方も徐々に複雑になっていきます。「きらきら星」や童謡などの馴染み深い曲を通して、バイオリンを弾く楽しさを味わう時期でもあります。この基礎がしっかりしていないと、後々応用技術が出てきたときに苦労することになるため、最も重要な時期と言えます。
中級編:ポジション移動とビブラート
第1ポジションで様々な曲が弾けるようになると、次は「ポジション移動」という壁に挑戦します。これは、左手を指板の上で滑らせて、より高い音を出す技術です。第3ポジション、第5ポジションと行動範囲が広がることで、音域が一気に拡大し、表現の幅が広がります。
また、中級レベルでは、音を波打たせて美しく響かせる「ビブラート」の練習も始まります。多くの学習者が憧れる技術ですが、習得には根気が必要です。さらに、弓の使い方も多様になり、スタッカート(音を短く切る)やスピッカート(弓を飛ばす)などの多彩なボウイングテクニックも登場します。この時期の教本選びは、モチベーションを維持するためにも非常に重要です。
上級編:ハイポジションと高度な表現
上級レベルになると、指板のほぼ全てを使用するハイポジションや、一度に2つの音を出す「重音奏法(ダブルストップ)」などの高度な技術が求められます。教本も単なる技術解説だけでなく、音楽的な表現力を養うための楽曲が中心となっていきます。
この段階では、協奏曲(コンチェルト)や難易度の高いソナタに挑戦することになります。エチュードも非常に音楽的な内容になり、技術練習そのものが演奏としての完成度を求められるようになります。自分の弱点(例えば、速いパッセージが苦手、重音が苦手など)に合わせて、特定の技術に特化した専門的な教本を取り入れることも増えてきます。
初心者におすすめの定番バイオリン教本3選

日本でバイオリンを習う場合、ほとんどの教室や独学者が以下の3つの主要な教本のうちのどれかを使用しています。それぞれに明確な特徴があり、指導方針や学習者のタイプによって向き不向きがあります。ここでは、それぞれの特徴を詳しく解説します。
感性を育てる「スズキ・メソード(鈴木鎮一ヴァイオリン指導曲集)」
世界的に最も有名なバイオリン教本の一つが「スズキ・メソード」です。この教本の最大の特徴は、「母語教育法」という理念に基づいていることです。赤ちゃんが耳から言葉を覚えるように、まずは模範演奏(CD)をたくさん聴いて、耳から音楽を覚えることを重視しています。
第1巻には「きらきら星変奏曲」をはじめ、親しみやすい民謡やクラシックの名曲が収録されており、弾いていて楽しい曲が多いのが魅力です。理屈よりも「まずは音を出して楽しむ」というアプローチなので、小さなお子様や、楽しく曲を弾きたい大人の方に非常に人気があります。一方で、楽譜を読む力(読譜力)が後回しになりがちという側面もあるため、別途、音符を読むトレーニングを取り入れるのがおすすめです。
バランス重視の「新しいバイオリン教本」
白い表紙から通称「白本(しろほん)」と呼ばれるのが、音楽之友社から出版されている「新しいバイオリン教本」です。この教本は、スズキ・メソードの良い部分を取り入れつつ、より学校の教科書のように体系的に学べるよう構成されています。
特徴としては、日本の童謡や唱歌が多く収録されていることや、技術的な解説と曲のバランスが良い点が挙げられます。また、第1巻の進度が比較的緩やかで、丁寧に進んでいくため、大人の初心者の方でも無理なく取り組めます。楽譜を読む練習も自然に含まれており、趣味でバイオリンを始めたい大人の方にとって、最もバランスの取れた選択肢と言えるでしょう。
基礎を徹底する「篠崎バイオリン教本」
赤い表紙から通称「赤本(あかほん)」と呼ばれるのが「篠崎バイオリン教本」です。この教本の特徴は、その圧倒的な情報量と細かさにあります。弓の持ち方から指の角度まで、図解や文章で非常に詳しく解説されています。
スズキや白本が「曲を弾きながら技術を覚える」スタイルだとすれば、篠崎は「徹底的な反復練習で技術を身につけてから曲に進む」という体育会系なスタイルです。最初のうちは地味な練習が続きますが、ここで培った基礎力は後々大きな武器になります。理屈でしっかりと理解したい方や、基礎テクニックを完璧に固めたい方に向いています。ただし、進度がゆっくりなので、根気強さが必要です。
基礎テクニックを鍛える!レベル別エチュード(練習曲)の順番

メインの教本と併用して進める「エチュード(練習曲)」は、バイオリンの技術向上に不可欠な存在です。エチュードには世界的な「定番の順番」が存在します。この順番を知っておくことで、自分が今どのレベルにいて、次に何を目指すべきかが明確になります。
初級:ウェルナーとホーマン
バイオリンを初めて触る段階で使われることが多いのが「ウェルナー」や「ホーマン」といった教本です。これらは厳密にはエチュードというよりは入門書に近い位置づけですが、基礎練習の要素が非常に強いため、ここで紹介します。
特に「ホーマン」は、2本のバイオリン(生徒と先生)で演奏するデュオ形式になっているのが特徴です。先生の伴奏に合わせて弾くことで、最初から正しい音程感やリズム感を養うことができます。単調になりがちな開放弦の練習も、ハーモニーを感じながら楽しく行えるような工夫がされています。独学の場合でも、録音に合わせて弾くことでアンサンブルの基礎を学べます。
初級~中級:ウォルファート(Wohlfahrt)
本格的なエチュードへの入り口として広く使われているのが「ウォルファート(60の練習曲 Op.45)」です。第1巻は全て第1ポジションで弾けるように作られていますが、弓の使い方や指の独立性について、非常に実践的な課題が詰まっています。
このエチュードでは、特に「移弦(いげん)」と呼ばれる、隣の弦に弓を移す動作をスムーズにする練習や、スラー(滑らかに弾く)とスタッカートの弾き分けなどを学びます。メロディも比較的音楽的で覚えやすく、バイオリンらしい動きを習得するのに最適です。多くの学習者が、メインの教本の2巻〜3巻あたりと並行してこのエチュードに取り組みます。
中級への登竜門:カイザー(Kayser)
バイオリン学習者にとって最初の大きな山場となるのが「カイザー(36の練習曲 Op.20)」です。このエチュードに入ると、「いよいよ中級者への仲間入り」と言われるほど重要な教本です。
カイザーの特徴は、一つの練習曲に対して様々な「変奏(バリエーション)」をつけて練習することにあります。例えば、1番の練習曲を、最初は普通の弓使いで、次は弓の根元だけで、その次はスタッカートで……といった具合に、一つの楽譜を使って多角的に右手の技術を磨いていきます。また、後半の番号に進むと、第3ポジションへの移動が登場し、本格的なポジション移動の訓練が始まります。ここを丁寧にクリアできるかが、上級者になれるかの分かれ道となります。
表現力を磨く:マザス(Mazas)
カイザーと並行して、あるいはカイザーの後に取り組まれることが多いのが「マザス(75の練習曲 Op.36)」です。特に第1巻の「特殊な練習曲(Etudes Speciales)」や第2巻の「旋律的な練習曲(Etudes Melodiques)」が有名です。
カイザーが機械的な技術トレーニングだとすれば、マザスは「歌うこと」を学ぶエチュードです。美しい旋律を、豊かな音色と抑揚(ダイナミクス)をつけて演奏することが求められます。カンタービレ(歌うように)の奏法や、弓の配分(元から先までどう計算して使うか)といった、音楽的な表現に直結する技術をここで養います。技術的には弾けても、音楽的に弾くのが難しい、奥深いエチュードです。
中級・上級の壁:クロイツェル(Kreutzer)
「バイオリンの聖書」とも呼ばれるほど、極めて重要な位置を占めるのが「クロイツェル(42の練習曲)」です。音大を目指す学生や、プロを目指す人なら誰でも必ず通る道であり、多くのアマチュア奏者にとっての「最終目標」とも言える難易度を誇ります。
全42曲の中に、バイオリン演奏に必要なほぼ全ての基礎技術が網羅されています。左手のトリル、重音、速いパッセージ、右手の複雑な移弦、マルテラート(ハンマーのように音を切る奏法)など、一曲一曲が非常に高い完成度を求められます。2番のエチュードなどは、一生をかけて毎日さらう(練習する)人もいるほどです。この教本を終える頃には、モーツァルトの協奏曲などが弾ける実力がついているはずです。
上級者の領域:ローデ、ドント、パガニーニ
クロイツェルを修了した後に待っているのが、「ローデ(24のカプリース)」や「ドント(Op.35)」といったさらに高度なエチュードです。このレベルになると、練習曲自体が芸術作品として演奏会で取り上げられることもあります。
そして、バイオリン技術の頂点に君臨するのが「パガニーニ(24のカプリース)」です。超絶技巧の代名詞とも言えるこの曲集は、プロのバイオリニストにとっても難関です。ここまで到達するには長い年月が必要ですが、レベル別の階段を着実に登っていけば、決して不可能な道のりではありません。まずは自分の足元にあるレベルのエチュードを確実にこなすことが大切です。
音程を良くする!音階教本(スケール)の選び方

「曲は弾けるけれど、なんとなく音痴に聞こえる」「高い音が外れやすい」という悩みを持つ方に足りていないのは、多くの場合「音階(スケール)」の練習です。プロの演奏家でも、練習時間の最初の30分は必ず音階練習に費やすという人が多いほど、音階はバイオリンの基礎中の基礎です。
音階教本を使うことで、指板上の地図(どこを押さえればどの音が出るか)が頭の中に出来上がり、初見で楽譜を読む力も向上します。
小野アンナ:日本での定番
日本国内で最も普及している音階教本が「小野アンナ ヴァイオリン音階教本」です。この教本は非常に見やすく整理されており、初心者から中級者まで幅広く対応しています。
最初は1オクターブの音階から始まり、徐々に2オクターブ、3オクターブへと範囲が広がっていきます。また、3度、6度、8度(オクターブ)といった重音のスケールも体系的に掲載されています。調性(ハ長調、イ短調など)ごとにページが分かれているため、「今日はト長調を練習しよう」といった使い方がしやすく、日々のウォーミングアップに最適です。多くの教室で推奨されている、信頼の一冊です。
カール・フレッシュ:上級者のバイブル
世界中の音大生やプロ奏者が愛用しているのが「カール・フレッシュ 音階・教本(スケール・システム)」です。こちらは小野アンナよりもさらに高度で、非常に分厚い内容となっています。
単一の弦だけで高いポジションまで移動する練習や、非常に複雑な重音のパターンなどが網羅されており、まさに「音階の辞書」のような存在です。初心者には情報量が多すぎて消化不良になる可能性がありますが、中級レベル以上で、より完璧な音程と高度な左手のテクニックを身につけたい場合には、避けて通れない教本です。まずは小野アンナなどで基礎を固め、その後にカール・フレッシュへ移行するのが一般的な流れです。
独学とレッスンで変わる教本の選び方

ここまで様々な教本を紹介してきましたが、独学で学ぶのか、先生について習うのかによって、最適な教本の選び方や使い方は変わってきます。それぞれの状況に合わせたアドバイスをお伝えします。
独学の場合は「解説の詳しさ」と「音源」を重視
独学でバイオリンを学ぶ場合、最大のハードルは「間違いを指摘してくれる人がいない」ことです。間違ったフォームや音程で練習し続けると、悪い癖がついてしまい、後で直すのが大変になります。
そのため、独学の方には「篠崎バイオリン教本」のように解説が文章や図解で詳しく書かれているものや、DVD・動画解説付きの入門書がおすすめです。また、正しい音を耳で確認するために、模範演奏CDやYouTube動画が充実している教本を選ぶことが必須条件です。最近では、QRコードを読み取ってスマホで手本動画を見られる教本も増えていますので、そういった最新のツールも積極的に活用しましょう。
先生につく場合は「指定教材」が基本
バイオリン教室に通う場合は、基本的には先生が指定する教本を使うことになります。先生によって「スズキで耳を育てたい」「篠崎で基礎を固めたい」といった指導方針があるからです。
もし、使いたい教本がある場合は、入会前の体験レッスンなどで「この教本を使ってみたいのですが」と相談してみるのも良いでしょう。ただし、独断で勝手に別の教本を進めたり、指定されていないエチュードを練習したりするのは避けましょう。先生は生徒の成長段階を見極めて課題を出しているため、自己判断での先走りは逆効果になることがあります。
副教材としての活用法
レッスンでは指定の教本を使いつつ、自宅での楽しみとして「ジブリ曲集」や「ポップス曲集」などの楽譜を取り入れるのはとても良いことです。好きな曲を弾くことはモチベーション維持につながります。ただし、基礎練習をおろそかにしないよう、練習時間の配分には気をつけましょう。
まとめ:バイオリン教本をレベル別に見極めて上達を目指そう
バイオリンの教本には、それぞれに明確な目的と対象レベルがあります。「なんとなく有名だから」という理由だけで選ぶのではなく、今の自分の技術レベルや、目指す演奏スタイルに合わせて選ぶことが重要です。
記事のポイント
- 教本・エチュード・音階の3つをバランスよく組み合わせるのが上達の近道。
- メイン教本は、楽しさ重視ならスズキ、バランスなら白本、基礎重視なら篠崎を選ぶ。
- エチュードは、ウォルファート → カイザー → クロイツェルという黄金ルートを意識する。
- 独学の人は、解説が詳しく、音源や動画がついている教材を必ず選ぶ。
焦って難しい教本に手を出すよりも、自分のレベルに合った教本を丁寧に仕上げる方が、結果として早く上達します。今回ご紹介したロードマップを参考に、あなたのバイオリンライフを支える最高のパートナー(教本)を見つけてくださいね。


