バイオリンの発表会が決まると、楽しみな気持ちと同時に「何を弾こうかな?」という悩みが生まれますよね。先生から提案されることもありますが、自分で弾きたい曲をリクエストしたいという方も多いはずです。
しかし、バイオリンの曲は「聴くと簡単そうなのに弾くと激ムズ」だったり、逆に「すごく派手に聴こえるけれど、意外と弾きやすい」という曲があったりと、難易度の判断が難しい楽器です。「今の自分の実力で弾ける曲はどれだろう?」「次の発表会では少し背伸びをして名曲に挑戦したい」
そんなふうに考えている方のために、今回はバイオリン発表会におすすめの曲を、難易度別に詳しく解説します。初心者から中級者、そしていつかは弾きたい憧れの曲まで、選曲のポイントと合わせてご紹介します。
バイオリンの発表会で弾く曲の難易度はどう判断する?

ピアノには「バイエル」や「ブルグミュラー」といった世界共通のような難易度の指標が広く知られていますが、バイオリンの場合はどうでしょうか。実は、バイオリンの曲の難易度を判断するには、いくつかの明確な基準があります。ここでは、日本で最も一般的な指標と、技術的なチェックポイントについて解説します。
「鈴木メソード」の巻数が一般的な目安
日本国内において、バイオリンの難易度を語る際によく使われる共通言語が「スズキ・メソード(鈴木鎮一ヴァイオリン指導曲集)」の巻数です。たとえスズキ・メソードで習っていなくても、「スズキの4巻くらいのレベル」と言えば、多くの先生や経験者に伝わります。
おおよその目安としては以下のようになります。
【初級】1巻〜3巻程度
第1ポジション(基本の位置)のみで弾ける曲から、少しポジション移動が入る段階です。
【中級】4巻〜6巻程度
第3ポジションなどの移動が頻繁になり、ビブラートや少し複雑な弓使い(ボーイング)が求められます。
【中上級】7巻〜10巻程度
ハイポジションの使用、速いパッセージ、高度な表現力が求められる協奏曲(コンチェルト)などが含まれます。
この巻数を基準にすると、自分のレベルに合った楽譜や曲を探しやすくなります。
「ポジション移動」の有無と範囲
バイオリンの難易度を大きく左右するのが、左手の「ポジション移動」です。初心者のうちは、左手を指板の最も低い位置(第1ポジション)に固定して弾きますが、レベルが上がると手を高い位置へ移動させて高音を出します。
第3ポジション(手が少し胴体に近づく位置)が出てくるかどうかが、初級と中級の大きな分かれ目です。さらに、第5ポジション、第7ポジションと高くなるにつれて、音程(イントネーション)を取るのが難しくなり、難易度が跳ね上がります。
弓のテクニックとリズムの複雑さ
左手の難しさだけでなく、右手(弓)の難易度も重要です。単に音を出すだけでなく、「スピッカート(弓を飛ばす)」や「スタッカート(音を切る)」といった特殊な奏法が必要な曲は、難易度が高くなります。
また、速いテンポでこれらをコントロールする必要がある曲や、リズムが不規則な曲も難易度が高いと判断されます。発表会では緊張で弓が震えてしまうこともあるため、右手のコントロールに少し余裕がある曲を選ぶのも一つの作戦です。
【初級編】バイオリン発表会におすすめの曲と難易度の目安

まずは、バイオリンを始めて間もない方や、まだポジション移動を習っていない、あるいは習い始めたばかりの方におすすめの曲です。初級の曲といっても、誰もが知る名曲がたくさんあります。「知っている曲」を弾くことは、聴いているお客さんにとっても楽しい時間になります。
きらきら星変奏曲(鈴木鎮一)
バイオリンを始めた人が最初に目標にする曲といえばこれです。単なる童謡の「きらきら星」ではなく、鈴木鎮一氏によって作曲された変奏曲(バリエーション)です。
タッカ・タッカというリズムや、三連符など、バイオリンの基礎的なリズムが凝縮されています。元気よく弾くバリエーションと、朗々と歌うテーマ部分の対比をつけることで、立派な演奏曲になります。初めての発表会には最適の1曲です。
メヌエット ト長調(ベートーヴェン)
「タラララー、タラララー」という優雅な出だしで有名な、ベートーヴェンのメヌエットです。映画やドラマでもよく使われるため、知名度は抜群です。
この曲のポイントは、優雅な3拍子のリズムと、中間部に出てくる重音(2つの弦を同時に弾くこと)です。重音が入ると一気にバイオリンらしい響きが増し、弾いている本人も満足感を得られます。基本的には第1ポジションだけで弾けますが、装飾音符などをきれいに決めるには丁寧な練習が必要です。
ガヴォット(ゴセック)
「タッタッ、タラララ」とかわいらしいスタッカートが特徴的な曲です。明るく軽快な曲調で、子供から大人まで人気があります。
この曲の最大の難所かつ見せ場は、弓を弦の上で弾ませるような軽いタッチです。また、中間部では少し滑らかなレガート奏法も出てくるため、弓の使い方の切り替えが重要になります。短くてインパクトがあり、発表会で「おっ、上手だな」と思わせやすい曲の一つです。
練習のヒント
スタッカートの部分は、弓を弦に押し付けすぎず、手首を柔らかく使って「良い響き」を残すように意識しましょう。
狩人の合唱(ウェーバー)
オペラ『魔弾の射手』の中の1曲で、勇壮で元気なメロディが特徴です。男の子の生徒さんや、力強い音を出したい方によく選ばれます。
力強いダウンボウ(下げ弓)と、軽やかなアップボウ(上げ弓)の使い分けがポイントです。また、曲の後半には、指を速く動かす部分もあり、指の独立性を鍛えるのにも役立ちます。ピアノ伴奏も豪華で、迫力のある演奏効果が期待できます。
【中級編】憧れの名曲に挑戦!バイオリン発表会の人気曲

ポジション移動(第3ポジション程度まで)やビブラートができるようになってくると、選べる曲の幅が一気に広がります。このレベルになると、バイオリン独特の「歌うような音色」や「華やかなパッセージ」を楽しめるようになります。
協奏曲イ短調 第1楽章(ヴィヴァルディ)
バイオリン学習者の登竜門とも言える非常に有名な協奏曲です。スズキ・メソードでは4巻に収録されています。バロック音楽特有のきっちりとしたリズムと、マイナー調のかっこいい響きが魅力です。
この曲では、第1ポジションと第3ポジションの移動が頻繁に出てきます。素早く正確にポジション移動をする技術が求められます。また、弓を弦に密着させてしっかりとした音を出す「デタシェ」という奏法を学ぶのにも最適な曲です。
学生協奏曲 第2番または第5番(ザイツ)
「学生協奏曲」という名前ですが、内容は非常にドラマチックで、発表会映えする曲です。特に第2番や第5番は人気があります。
冒頭の和音(重音)による力強いファンファーレ的なフレーズや、ロマンチックで歌うような中間部など、1曲の中で様々な表情を見せることができます。左手の指を細かく動かす練習にもなり、弾ききった時の達成感は格別です。「協奏曲(コンチェルト)」という響きに憧れる方におすすめのデビュー曲です。
ユーモレスク(ドヴォルザーク)
ピアノ曲としても有名ですが、バイオリン版はさらに哀愁漂う美しい響きが特徴です。CMなどでもよく耳にする名曲です。
技術的には、付点リズム(跳ねるようなリズム)を甘くならずに正確に刻むことが求められます。また、少し高いポジションを使った柔らかい音色でのビブラートが必要になるため、表現力が試される曲でもあります。派手さよりも、音色の美しさで聴衆を魅了したい方にぴったりです。
白鳥(サン=サーンス)
組曲『動物の謝肉祭』の中の1曲で、本来はチェロのための曲ですが、バイオリンでもよく演奏されます。ゆったりとしたテンポで、美しいメロディが終始流れます。
この曲の難しさは「速く弾くこと」ではなく「ゆっくり美しく弾くこと」にあります。長い弓を使って、音が震えないように保つ(ロングトーン)技術と、美しいビブラートが必須です。音程のズレが非常に目立ちやすいため、ごまかしが利きません。中級レベルの方が、自分の音色を磨くために挑戦するのに最適な一曲です。
タイスの瞑想曲(マスネ)
バイオリンの名曲中の名曲です。誰もが一度は弾いてみたいと憧れる曲ではないでしょうか。静かで美しい旋律から始まり、中間部では情熱的に盛り上がります。
一般的には中級〜中上級レベルとされています。その理由は、ハイポジション(高い音域)が出てくることと、高度な感情表現が求められるからです。特に曲の最後の方に出てくる「フラジオレット(指で軽く触れて透明な音を出す奏法)」などの特殊奏法もあり、総合的な技術が必要です。
成功の鍵
音程を取ることに必死になりすぎず、曲の物語や情景を思い浮かべながら「歌う」ことを意識しましょう。
難易度だけじゃない!自分に合った発表会の曲を選ぶポイント

「弾けるか弾けないか(難易度)」はもちろん大切ですが、発表会を成功させるためには、それ以外の要素も考慮する必要があります。ここでは、自分にぴったりの曲を選ぶための3つの視点をご紹介します。
ピアノ伴奏との相性を考える
バイオリンの発表会では、ほとんどの場合ピアノ伴奏がつきます。曲を選ぶ際は、ピアノ伴奏がどのようなものかも確認しましょう。
例えば、初心者の曲でもピアノ伴奏が豪華であれば、全体として非常に立派な演奏に聴こえます。逆に、無伴奏(バイオリンのみ)の曲は、ごまかしが利かず、聴衆の注目がすべてバイオリンに集まるため、難易度以上に精神的な負担が大きくなります。先生に伴奏の楽譜も見せてもらい、全体の響きをイメージしてみましょう。
演奏時間とスタミナのバランス
発表会での演奏時間は、3分〜5分程度が一般的です。協奏曲の全楽章を弾くと10分以上かかることもありますが、集中力や体力が続かないことがあります。
特に普段の練習で通して弾くだけで疲れてしまうような曲は、本番の緊張感が加わると最後まで体力が持たない可能性があります。無理をして長い曲を選ぶよりは、少し短めの曲を選んで、一音一音を丁寧に弾き込む方が、結果として良い演奏になることが多いです。協奏曲なら「第1楽章のみ」と抜粋するのも一般的です。
「好きな曲」と「得意な曲」を見極める
これが最も難しい選択かもしれません。「すごく好きだけど、技術的にギリギリの曲」を選ぶか、「そこまで好きではないけど、自分の得意な技術(例えば速弾きやきれいな音色)が活かせる曲」を選ぶか。
発表会までの練習期間が3ヶ月以上あるなら、好きな曲(チャレンジ曲)を選んで練習のモチベーションにするのがおすすめです。逆に期間が短い場合は、自分の得意なスタイルの曲を選んで、完成度を高めることに集中する方が安心です。
発表会に向けた練習計画とモチベーション維持のコツ

曲が決まったら、あとは本番に向けて練習あるのみです。しかし、数ヶ月にわたる練習期間中には、どうしてもやる気が出なかったり、壁にぶつかったりすることもあります。ここでは、最後まで楽しく練習を続けるためのコツをお伝えします。
難しい箇所を「分解」して練習する
曲全体を最初から最後まで通して練習ばかりしていませんか?それでは、弾けているところは上手になりますが、弾けないところはいつまでたっても弾けないままです。
楽譜の中で「ここが苦手」という部分を数小節単位でピックアップし、そこだけを重点的に練習しましょう。例えば「ポジション移動の瞬間だけを10回繰り返す」「リズムを変えて練習してみる」といった部分練習が、上達への近道です。
自分の演奏を録音して客観的に聴く
バイオリンは耳元で鳴っている音と、数メートル離れて聴こえる音がかなり違う楽器です。自分では「感情たっぷりに弾いている」つもりでも、録音を聴くと「意外と平坦に聴こえる」ということはよくあります。
スマートフォンの録音機能で構いませんので、こまめに自分の演奏を録音して聴き返してみましょう。「音程が実はズレていた」「リズムが走っていた」といった課題がすぐに見つかります。これは少し勇気がいることですが、効果は絶大です。
本番を想定した「通し練習」を取り入れる
発表会が近づいてきたら、本番と同じ靴を履いて練習したり、家族や友人に前で聴いてもらったりする「リハーサル練習」を行いましょう。
普段は間違えないような場所でも、誰かに見られていると緊張して間違えることがあります。「緊張すると自分はどうなるのか(弓が震える、テンポが速くなるなど)」を事前に知っておくだけで、本番のパニックを防ぐことができます。お辞儀から演奏終了までをセットで練習するのがポイントです。
衣装での練習も忘れずに
特に女性のドレスの場合、袖が邪魔でハイポジションが弾きにくい、肩当てが滑りやすいといったトラブルが起きがちです。必ず衣装を着て演奏してみる日を設けましょう。
バイオリン発表会の曲と難易度についてのまとめ
バイオリンの発表会の曲選びは、自分の成長を感じられる素晴らしい機会です。難易度という指標は大切ですが、それ以上に「この曲を弾いてみたい」「誰かに聴かせたい」という気持ちが、練習を支える一番のエネルギーになります。
最後に、今回のポイントを振り返ります。
- 難易度の目安を知る
スズキ・メソードの巻数やポジション移動の有無を基準にするとわかりやすいです。 - 初級者はリズムと基礎を重視
「きらきら星」や「メヌエット」など、基礎技術が詰まった名曲がおすすめです。 - 中級者は表現力に挑戦
「ヴィヴァルディ」や「タイスの瞑想曲」など、ビブラートやポジション移動を使う曲で世界を広げましょう。 - トータルバランスで選ぶ
ピアノ伴奏との相性や演奏時間を考慮し、無理のない選曲を心がけましょう。
あなたにとって最高の1曲が見つかり、発表会が素敵な思い出になることを応援しています。焦らず、先生とよく相談しながら、自分にぴったりの曲を選んでくださいね。



