バイオリンを練習していて、顎の下や首筋に「あざ」や「黒ずみ」ができて悩んでいませんか?「練習を頑張っている証(勲章)」と言われることもありますが、鏡を見るたびに気になってしまったり、痛みやかゆみを伴って練習に集中できなくなったりするのは辛いものです。
特に女性や肌の弱い方にとって、首元の肌トラブルは深刻な問題ですよね。「私の構え方が悪いのかな?」「このまま練習を続けても大丈夫?」と不安になることもあるでしょう。
実は、バイオリンによるあざは、適切な対策とケアを行うことで予防したり、症状を軽減したりすることが可能です。原因は単なる摩擦だけでなく、使用している道具の素材や、体の使い方にある場合も少なくありません。
この記事では、バイオリンのあざができる根本的な原因から、今すぐできる具体的な対策、おすすめのグッズ、そして正しいフォームの見直し方までを詳しく解説します。あざの悩みから解放されて、心置きなく演奏を楽しむためのヒントを見つけてください。
バイオリンのあざはなぜできる?主な4つの原因

バイオリンを弾く人特有の首のあざは、医学的には「バイオリンだこ」や「接触性皮膚炎」などと呼ばれることがあります。しかし、一言であざと言っても、その原因は人によってさまざまです。まずは自分の症状が何によって引き起こされているのかを知ることが、解決への第一歩です。
1. 摩擦と圧迫による「色素沈着」と「肥厚」
最も一般的な原因は、長時間の練習による物理的な刺激です。バイオリンを構える際、顎当てと首の皮膚が常に接触し、細かい摩擦が繰り返されます。皮膚は防御反応として、角質を厚くして自分を守ろうとします。これが「肥厚(ひこう)」と呼ばれる状態で、いわゆる「たこ」のような硬さを生み出します。
さらに、強い力で楽器を挟み込むことで皮膚が圧迫され、炎症が起きた後にメラニン色素が沈着してしまうことがあります。これが黒ずみや茶色いあざの正体です。特に乾燥肌の人は摩擦の影響を受けやすく、短時間の練習でも赤くなりやすい傾向があります。
2. 顎当てや金具による「金属・素材アレルギー」
「ただのあざだと思っていたら、実はアレルギーだった」というケースも意外と多く見られます。バイオリンの顎当てを固定している金具(クランプ)には、ニッケルなどの金属が含まれていることが一般的です。汗をかくと金属イオンが溶け出し、それが肌に触れることでアレルギー反応を引き起こし、赤み、かゆみ、ただれなどの症状が出ることがあります。
また、金属だけでなく、顎当てに使われている「木材(黒檀、ローズウッドなど)」や、表面に塗られている「ニス」、あるいはプラスチック素材そのものが肌に合わない場合もあります。練習後に特定の場所だけが猛烈に痒くなる場合は、アレルギーの可能性を疑ってみる必要があります。
3. 汗や皮脂による「皮膚トラブル」
練習中は首元に意外と多くの汗をかきます。顎当てと肌の間は通気性が悪く、湿気がこもりやすい環境です。汗や皮脂が長時間肌に触れたままになると、細菌が繁殖しやすくなり、あせも(汗疹)やニキビ、カビの一種であるマラセチア菌による皮膚炎などを引き起こすことがあります。
不衛生な状態が続くと、あざの治りが遅くなるだけでなく、色素沈着が悪化する原因にもなります。特に夏場や、熱のこもる発表会の衣装を着ている時などは注意が必要です。
4. 無理な力みと「フォームの問題」
「バイオリンは顎で挟むもの」という意識が強すぎると、必要以上に首や肩に力が入ってしまいます。ガチガチに力を入れて楽器を押し付けるように挟んでいると、当然ながら皮膚への負担は倍増します。
プロのバイオリニストでもあざができる人はいますが、肌への負担が最小限になるような体の使い方ができている場合、あざは薄かったり、あるいは全くできなかったりすることもあります。あざが痛みを伴うほどひどい場合は、構え方そのものに無理があるサインかもしれません。
あざを防ぐための効果的な対策と便利グッズ

原因がわかったところで、次は具体的な対策を見ていきましょう。肌への直接的な刺激を減らすためには、間に何かを挟むのが最も手軽で効果的です。また、アレルギー対策や肌を守るための専用グッズも数多く販売されています。
定番かつ即効性あり!「ハンカチ・当て布」
一番すぐにできる対策は、顎当ての上にハンカチや手ぬぐいを乗せて弾くことです。布を一枚挟むだけで、摩擦を大幅に軽減し、汗を吸収してくれるため、肌トラブルのリスクが下がります。
素材は、肌触りの優しいコットン(綿)や、滑らかなシルク(絹)、吸水性の高いガーゼなどがおすすめです。タオル地は厚みが出すぎて構えにくくなる場合があるため、薄手のものから試してみましょう。ただし、布を挟むことで楽器の振動が吸収され、音がわずかにミュートされる(こもる)と感じる人もいます。練習時は布を使い、本番だけ外すという使い分けも一つの方法です。
肌触りと機能性を両立「顎当てカバー」
ハンカチだと落ちてしまったり、位置がずれたりして不便な場合は、バイオリン専用の「顎当てカバー」がおすすめです。顎当てに被せてゴムや紐で固定するタイプなので、演奏中にずれる心配がありません。
カバーの素材には、吸湿性に優れた本革(シープスキンやディアスキン)や、洗える布製などがあります。特に革製のカバーは、肌にしっとりと馴染み、汗をかいても滑りにくくなるため、演奏の安定感が増すというメリットもあります。クッション性があるものを選べば、顎の骨への当たりも柔らかくなります。
金属アレルギー対策「チタン製金具・プラスチック顎当て」
金具部分がかゆくなる場合や、金属アレルギーの疑いがある場合は、金具の素材を変えるのが根本的な解決策です。通常の金具(ニッケルメッキなど)から、「チタン製」の金具に交換することで、アレルギー反応を防げることがあります。チタンは軽量で音質への好影響も期待できるため、プロにも愛用者が多い素材です。
また、ウィットナー社などが販売している「抗アレルギー仕様」のプラスチック製顎当てに変えるのも有効です。これらは金属パーツを使用していないか、肌に触れない構造になっているため、安心して使用できます。
目立たずに保護したいなら「保護シート・テープ」
「本番でハンカチやカバーを付けるのは見た目的に避けたい」という方には、肌に直接貼るタイプの保護シートやテープが役立ちます。医療用のシリコンテープや、傷跡保護用のシートなどを、首のあざができやすい部分に貼っておくのです。
透明や肌色のものを選べば、客席からはほとんど見えません。肌と楽器の間に物理的なバリアを作ることで、摩擦を完全にシャットアウトできます。ただし、テープの粘着剤で肌がかぶれることもあるので、長時間の貼りっぱなしには注意が必要です。
こまめな「清掃と除菌」で清潔を保つ
意外と見落としがちなのが、顎当て自体の汚れです。練習後の顎当てには、汗、皮脂、ファンデーションなどがびっしりと付着しています。これを放置すると雑菌の温床となり、次回の練習時に肌トラブルを引き起こします。
練習が終わったら、必ず柔らかい布で顎当ての汚れを拭き取る習慣をつけましょう。時々は専用のクリーナーや、固く絞った布で水拭き(その後に乾拭き)をして、清潔な状態を保つことが大切です。
痛くない構え方へ!フォームと脱力のポイント

道具による対策も大切ですが、やはり基本となるのは「構え方」です。首や肩に無理な力がかかっていると、どんなに良いグッズを使ってもあざや痛みの問題は解決しません。ここでは、肌への負担を減らすための技術的なポイントを解説します。
「挟む」のではなく「乗せる」イメージを持つ
多くの初心者が陥りやすいのが、「バイオリンを顎と肩で必死に挟んで落ちないようにする」という意識です。落ちないようにと力を込めれば込めるほど、顎で楽器を強くプレスすることになり、肌への摩擦と圧迫が強まります。
バイオリンは、鎖骨という「棚」の上にちょこんと乗せるイメージを持ちましょう。顎は、楽器がずれないように上からそっと蓋をするだけの役割です。頭の重さだけで十分に支えられるため、顎でギューッと押し付ける必要はありません。
左手のサポートを有効に使う
「左手を離しても楽器が落ちないように挟まなければならない」と教わることがありますが、これはあくまで「楽器の角度を安定させるためのバランス感覚」を養うための練習の一環であることが多いです。
実際の演奏中、左手は常にネックに触れています。完全に顎だけで支えようとせず、左手の親指や人差し指の付け根でも楽器をふんわりと支える意識を持つと、首への負担が分散されます。特にポジション移動がない時や開放弦を弾く時など、左手の支えをうまく使うことで、顎の力を抜くことができます。
姿勢の崩れと「猫背」に注意
練習に熱中すると、どうしても背中が丸まり、顔が前に突き出るような姿勢になりがちです。猫背になると、頭が前に出る分、楽器を支えるためにより強い力で顎を引かなければならなくなります。
背筋を伸ばし、頭が背骨の真上に乗っている状態をキープしましょう。頭の位置が高くなれば、自然と楽器の上に顎が乗りやすくなり、無理な圧力をかけずに済みます。鏡で横からの姿をチェックし、首が不自然に前に出ていないか確認してみてください。
長時間の練習にはこまめな休憩を
どんなに良いフォームでも、同じ箇所に何時間も接触し続ければ、肌へのダメージは避けられません。特にあざができ始めの時期や、痛みがある時は、無理に練習を続けない勇気も必要です。
30分に一度は楽器を置いて、首を回したりストレッチをしたりして、圧迫されていた皮膚を休ませてあげましょう。血流を良くすることで、皮膚の回復力も高まります。
顎当てと肩当ての選び方と調整術

バイオリンのあざは、あなたの骨格と楽器の形状がマッチしていないことによる「不適合」が原因であるケースも非常に多いです。道具を自分に合わせることで、驚くほど楽になることがあります。
顎当ての「高さ」と「形状」を見直す
首の長さや顎の形は人それぞれです。標準装備されている顎当てが、必ずしも万人に合うとは限りません。
例えば、首が長い人が低い顎当てを使うと、隙間を埋めるために無理に首を曲げたり、強く挟んだりしてしまいます。逆に、顎当てが高すぎると圧迫感が強くなります。
楽器店でいくつかの種類の顎当てを試させてもらいましょう。「カウフマン型」「ガルネリ型」など、形状によって顎の引っかかり具合が全く異なります。カップが深いものが合う人もいれば、浅くて平らなものが合う人もいます。
肩当ての位置と高さでフィット感を調整
顎当てを変えるのはハードルが高い場合、肩当ての調整で解決することもあります。肩当ての高さを上げれば、相対的に顎当てと首の距離が縮まり、楽に挟めるようになります。
また、肩当てを取り付ける位置や角度を微調整するだけでも、楽器の安定感は変わります。肩当てが体にフィットしていれば、顎で強く押さえつけなくても楽器が安定するため、結果的にあざの原因となる摩擦を減らすことができます。
「ジェルレスト」などのクッションアイテム
どうしても顎当ての硬さが辛い場合は、顎当ての上に貼り付ける「ジェルパッド」や「クッションシール」を活用しましょう。
ぷにぷにとした素材が緩衝材となり、骨への当たりを和らげてくれます。滑り止め効果もあるため、軽い力で楽器を支えられるようになり、一石二鳥です。見た目も黒いものが多く、目立ちにくい製品が揃っています。
メモ:
顎当てや肩当ての調整は、自分一人で判断するのが難しい場合があります。レッスンの先生や、弦楽器専門店のスタッフに相談し、客観的に構えを見てもらいながら調整することをおすすめします。
できてしまったあざのケアと治療法

すでにできてしまった首のあざや黒ずみ。これをどうケアすれば良いのでしょうか。放置すると色素沈着が定着してしまうこともあるため、早めの対処が肝心です。
皮膚科での専門的な治療
もし、あざが赤く腫れている、痛みが強い、かゆみが止まらない、浸出液が出ているといった症状がある場合は、迷わず皮膚科を受診してください。
ただのあざだと思っていても、細菌感染や真菌(カビ)による感染症を起こしている可能性があります。医師の診断のもと、炎症を抑えるステロイド外用薬や、抗真菌薬などが処方されれば、早期に治癒します。
色素沈着へのスキンケア
炎症が治まった後の茶色い黒ずみ(色素沈着)には、美白ケアが有効な場合があります。顔のシミケアと同じように、保湿を徹底し、肌のターンオーバーを促すことが大切です。
- 保湿:乾燥すると肌のバリア機能が低下し、摩擦の影響を受けやすくなります。練習後は化粧水やクリームで入念に保湿しましょう。
- 紫外線対策:首元は日焼けしやすい場所です。色素沈着した部分が紫外線を浴びると、さらに色が濃くなってしまいます。外出時は日焼け止めやストールで守りましょう。
- 美白有効成分:ビタミンC誘導体やトラネキサム酸などが配合されたスキンケア用品を取り入れるのも一つの手です(効果には個人差があります)。
どうしても隠したい時のメイク術
発表会や結婚式などで、首元のあざを一時的に隠したい場合は、コンシーラーやファンデーションを活用しましょう。
あざの色が濃い場合は、オレンジ系のコンシーラーで色味を補正してから、肌色のファンデーションを重ねると綺麗に隠れます。カバー力の高い舞台用メイク用品(ボディ用ファンデーションなど)や、あざ隠し専用のテープも市販されています。ただし、メイクをしたままバイオリンを弾くと楽器に付着してしまうので、演奏時は当て布をするなどの配慮が必要です。
まとめ:バイオリンのあざは適切な対策で改善できる
バイオリンによる首のあざは、多くの奏者が一度は通る悩みですが、決して「我慢しなければならないもの」ではありません。原因を正しく理解し、自分に合った対策を講じることで、肌への負担を最小限に抑えながら演奏を楽しむことができます。
記事のポイント振り返り
- 原因を知る:単なる摩擦だけでなく、金属アレルギーや汗、フォームの力みも大きな要因。
- 物理的に守る:ハンカチ、当て布、専用の顎当てカバーは最も手軽で効果的な予防策。
- 道具を見直す:顎当ての素材や高さ、金具(チタン製など)を自分に合わせてカスタマイズする。
- フォームを改善:「挟む」のではなく「乗せる」意識で脱力し、無理な圧迫を避ける。
- 適切なケア:炎症があるなら皮膚科へ。保湿と清潔を保つことが美肌への近道。
「あざができるほど練習した」という努力は素晴らしいものですが、痛みを抱えたままでは最高のパフォーマンスを発揮することはできません。ご自身の肌の状態や演奏スタイルに合わせて、できることから一つずつ対策を試してみてください。
肌ストレスのない快適な状態で、伸び伸びとバイオリンを奏でられるようになることを心から応援しています。


