「子供がバイオリンに興味を持ったみたいだけど、本物は高くて手が出せない」「おもちゃでもいいから、実際に弾ける感覚を味わわせてあげたい」そんなふうに考えている親御さんは多いのではないでしょうか。バイオリンは憧れの楽器ですが、敷居が高いイメージがあるのも事実です。
でも、安心してください。最近の「バイオリンおもちゃ」は驚くほど進化しています。単に音が鳴るだけのものから、弓を動かす動きに合わせてメロディが進むハイテクなもの、さらには本物そっくりの弦が張ってあり、実際に音を擦り出せるものまで、その種類は実に多彩です。おもちゃといえど、子供の「弾いてみたい!」という純粋な気持ちを満たすには十分な機能を持ったものがたくさんあります。
この記事では、数あるバイオリンおもちゃの中から、「弾ける」というキーワードに注目して、その仕組みや選び方、そして知育としてのメリットまでをやさしく解説します。お子様へのプレゼント選びや、音楽への第一歩として、ぜひ参考にしてみてください。
「バイオリンおもちゃ」で「弾ける」とはどういうこと?

インターネットやお店で「弾けるバイオリンおもちゃ」を探していると、いくつかの異なるタイプの「弾ける」があることに気づくはずです。ここを勘違いしてしまうと、「思っていたのと違う」という失敗につながりかねません。まずは、おもちゃの世界における「弾ける」の定義を整理しておきましょう。
1. 弓の動きに合わせてメロディが進む「電子演奏」
最も人気があり、子供たちがすぐに楽しめるのがこのタイプです。実際には弦が振動して音が出ているわけではありません。本体にあらかじめ内蔵されたメロディ(ディズニーの曲やクラシックの名曲など)が、弓を動かすアクションに合わせて一音ずつ、あるいは一小節ずつ進んでいく仕組みです。
このタイプの素晴らしい点は、リズムさえ合わせれば、誰でも最初から「プロのような演奏」ができることです。弓を早く動かせば早いテンポで、ゆっくり動かせばゆったりとした曲調で音楽が流れます。「自分が弾いている」という全能感を味わえるため、小さな子供でも飽きずに楽しむことができます。
2. 実際に弦をこすって音を出す「擬似演奏」
こちらは、より本物のバイオリンに近い構造をしています。プラスチックやナイロン製の弦が張ってあり、それを松脂(まつやに)を塗った弓でこすることで、物理的に音を出します。本物のバイオリンと同じ発音原理ですが、あくまでおもちゃであるため、音程(ドレミ)を正確に出すのは非常に難しいのが特徴です。
「キーキー」という擦れる音が鳴るのが基本で、きれいなメロディを奏でるというよりは、「音が出る仕組みを体験する」ことに主眼が置かれています。しかし、指で弦を押さえると音の高さが変わる感覚は味わえるため、理科的な好奇心を満たすにはうってつけです。
3. 本物さながらの「スケールモデル」
おもちゃと本物の境界線にあるのが、木製で作られた本格的なトイバイオリンです。サイズは小さいですが、構造は本物に近く、調弦(チューニング)も可能です。ただし、楽器としての精度は「本物のバイオリン」には及びません。
これを「弾ける」と呼ぶ場合、それは「練習すれば曲になる可能性がある」という意味合いが強くなります。音色は本物に近いですが、初心者の子供がいきなり綺麗な音を出すのは難しく、親御さんのサポートが必要になるケースが多いでしょう。
【「弾ける」のタイプ別比較】
●電子タイプ:誰でもすぐに名曲が弾ける。音はスピーカーから出る電子音。
●弦タイプ(プラスチック):弦をこする感触がある。音は「キーキー」という摩擦音に近い。
●木製本格タイプ:調弦が必要。音は本物に近いが、技術が必要。
子供が夢中になる!弾けるバイオリンおもちゃの主な種類

「弾ける」の意味がわかったところで、次は実際にどのような種類のおもちゃが販売されているのか、具体的な特徴を見ていきましょう。子供の性格や年齢に合わせて選ぶことが大切です。
キャラクターとコラボした「多機能電子バイオリン」
おもちゃ売り場で最も目を引くのが、人気キャラクターとコラボレーションした電子バイオリンです。アンパンマンやディズニープリンセスなどのデザインが施されており、見た目の可愛らしさは抜群です。これらの商品は「弾く」機能だけでなく、光る演出や、キャラクターの声で応援してくれる機能などがついています。
特に「トレモロ奏法」のような細かい弓の動きにも反応するセンサーを搭載しているものは、子供が夢中で弓を動かすきっかけになります。「発表会モード」や「レッスンモード」など、段階を踏んで遊べる工夫が凝らされているため、長く遊べるのも魅力です。
見た目にこだわった「リアル調プラスチックバイオリン」
キャラクターものではなく、もっと「バイオリニストごっこ」に没頭したい子供には、木目調の塗装が施されたプラスチック製のバイオリンが人気です。遠目に見ると本物のバイオリンのように見え、ステージ衣装を着てごっこ遊びをするのに最適です。
このタイプには、電子回路が入っていて自動演奏するものと、単に形だけで音は出ない(または弦をこする音だけの)ものがあります。ネット通販などで安価に購入できることが多いですが、商品説明をよく読んで「音が電子音なのか、物理的な音なのか」を確認する必要があります。
温もりを感じる「木製トイバイオリン」
プラスチックではなく、実際に木材を使って作られたおもちゃもあります。これらは知育玩具メーカーなどが販売しており、手触りや重量感が本物に近いです。プラスチック製のように落としても割れない耐久性はありませんが、楽器を大切に扱う心を育てるには良い選択肢です。
音量は控えめに作られていることが多く、マンションなどで大きな音が出せない環境でも遊びやすいのが特徴です。ただし、弦の張力を調整する「ペグ」の部分がおもちゃ仕様だと緩みやすく、まともな音程を維持するのが難しい場合もあります。
年齢別・目的別で見るバイオリンおもちゃの選び方

バイオリンおもちゃは、対象年齢によって機能やサイズが大きく異なります。3歳の子供と小学生では、求める遊び方が全く違うからです。ここでは、年齢や目的に合わせた失敗しない選び方をご紹介します。
【3歳〜4歳】リズム遊びと「できた!」の喜びを重視
この年齢の子供には、迷わず「電子タイプのキャラクターバイオリン」をおすすめします。まだ手先の細かいコントロールが難しいため、弓を弦に当てるだけで音が鳴る、あるいはボタンを押すだけで曲が流れるといった「成功体験」が重要です。
弓が本体から外れにくいガイドがついているものや、振り回しても壊れにくい耐久性のあるものを選びましょう。まずは「音楽に合わせて体を動かす楽しさ」や「自分で音を出す喜び」を感じてもらうことが、将来的な音楽への興味につながります。
【5歳〜6歳】なりきり遊びとリアリティの追求
幼稚園や保育園の年長さんくらいになると、ごっこ遊びがより具体的になります。「プリンセスみたいに弾きたい」「テレビで見たバイオリニストの真似をしたい」という欲求に応えるためには、見た目のリアルさが重要になってきます。
この時期には、少し機能が複雑な電子バイオリンや、簡単な弦楽器のおもちゃが適しています。弓の持ち方を真似してみたり、顎に楽器を挟むポーズをとってみたりと、形から入ることで集中力や観察力が養われます。サイズ感も重要になるので、あまりにも小さすぎる赤ちゃん用のおもちゃは避けたほうが無難です。
【小学生以上】楽器への興味か、純粋な遊びか
小学生になると、おもちゃでは満足できなくなる子も出てきます。「本当にドレミを弾きたい」と言い出した場合は、おもちゃではなく、後述する「分数バイオリン」などの安価な入門用楽器を検討する時期かもしれません。
一方で、単に音楽が好きで手軽に楽しみたい場合は、電子楽器メーカーが作っているような、少し大人向けの電子トイバイオリンもあります。これらはインテリアとしても楽しめるデザイン性の高いものが多く、長く愛用できます。
選び方のポイント:
パッケージに記載されている「対象年齢」は必ずチェックしましょう。特に弓の先端などは尖っている場合があるため、対象年齢以下のお子様に与える際は安全面に十分配慮してください。
バイオリンおもちゃを購入する前に知っておきたいメリット・デメリット

「せっかく買ったのにすぐに飽きてしまった」「思ったより音がうるさくて困った」といった後悔をしないために、バイオリンおもちゃの良い点と注意点をあらかじめ理解しておきましょう。
メリット:音楽へのハードルを極端に下げてくれる
最大のメリットは、バイオリンという難しい楽器への心理的なハードルを取り払ってくれることです。本物のバイオリンは、音を出すだけでも数ヶ月の練習が必要なことがありますが、おもちゃなら手にしたその瞬間から「演奏者」になれます。
また、リズム感や情緒を育む効果も期待できます。特に「弓を動かす」という動作は、右手と左手で違う動きをする必要があるため、脳への良い刺激になります。電子タイプであっても、曲のテンポに合わせて弓を動かす遊びは、立派なリズムトレーニングになります。
メリット:楽器の扱いやマナーを学べる
おもちゃであっても、「演奏が終わったらケース(箱)にしまう」「弓を振り回さない」「大切に扱う」といったルールを決めることで、楽器に対する礼儀やマナーを教えることができます。これは、将来本物の楽器を習うことになった際に、非常に大きなアドバンテージとなります。
デメリット:音感や変な癖への懸念
一方で、デメリットも存在します。最も大きな点は「正しい音程ではない」ことです。調律できないおもちゃのバイオリンは、ドレミの音階が狂っていることがほとんどです。絶対音感を育てたいと考えている時期には、音が狂ったおもちゃを長時間聞かせることに慎重になる親御さんもいます。
また、構え方や弓の持ち方が自己流になってしまうため、もし将来本格的にバイオリン教室に通うことになった場合、変な癖を直すのに苦労する可能性があります。「これはおもちゃだから自由に楽しむもの」と割り切って遊ばせる心の余裕が必要です。
【購入前のチェックリスト】
□ 音量調節:電子タイプの場合、ボリューム調整ができるか。
□ 電池の種類:単3など一般的な電池か。すぐに交換できるか。
□ サイズ:子供の身長に対して大きすぎないか、小さすぎないか。
本格的に習わせたい?おもちゃと本物のバイオリンの境界線

おもちゃを探しているうちに、「これなら安い本物を買ったほうがいいのではないか?」と迷う方もいるかもしれません。ここでは、おもちゃと「本物の子供用バイオリン(分数バイオリン)」の決定的な違いについて解説します。
「分数バイオリン」とは?
バイオリンには、子供の身長に合わせてサイズを小さくした「分数バイオリン」というものが存在します。大人が使うフルサイズを4/4として、3/4、1/2、1/4、1/8、1/10、1/16といったサイズ展開があります。
これらは「おもちゃ」ではなく、構造も材質も大人用と同じ「楽器」です。当然、定期的な弦の交換や、弓の毛の張り替え、調弦といったメンテナンスが必要です。価格も、安価なセットで2〜3万円程度から、高価なものは数十万円とピンキリです。
おもちゃと本物、どちらを選ぶべき?
判断の基準は、「習う予定があるかどうか」です。もし近いうちにバイオリン教室に通う予定がある、あるいは親御さんが弾けて教えられる環境にあるなら、おもちゃを経由せずに最初から安価な分数バイオリンを購入(またはレンタル)するのが正解です。
逆に、「まずは興味を持つきっかけにしたい」「親は教えられないけれど、子供が楽しそうにしている姿を見たい」という場合は、間違いなくおもちゃがおすすめです。本物のバイオリンは、調弦が非常に難しく、初心者の親御さんだけでは「ドレミ」の音を出す状態にすることさえ困難だからです。
その中間の選択肢はある?
最近では、数千円で購入できる中国製の激安バイオリンもネットで出回っています。これらは見た目は楽器ですが、作りが粗く、まともに演奏できない(すぐに音が狂う、部品が壊れる)ケースも少なくありません。「おもちゃとして割り切って買う」なら良いですが、「これで練習しよう」と考えるのは避けたほうが賢明です。
もし「おもちゃ以上、本格レッスン未満」を目指すなら、しっかりとした作りのおもちゃバイオリンか、信頼できる楽器店が調整した中古の分数バイオリンを探すのが良いでしょう。
サイズの目安:
本物のバイオリンを選ぶ際は、身長だけでなく「腕の長さ」が基準になります。おもちゃの場合はそこまで厳密ではありませんが、子供が構えたときに左手が届く程度のサイズ感を選ぶと、よりリアルなごっこ遊びが楽しめます。
まとめ:バイオリンおもちゃで弾ける体験を通して音楽を好きになろう
バイオリンおもちゃは、子供たちにとって憧れの音楽の世界への入り口です。「弾ける」といっても、電子音でメロディを奏でるものから、実際に弦をこする感触を楽しむものまで、そのアプローチはさまざまです。
大切なのは、そのおもちゃを通じて子供が何を感じるかです。「自分の手で音を出せた!」「曲に合わせて演奏できた!」という達成感や喜びは、音楽への肯定的なイメージを育てます。最初はおもちゃでの遊びだったものが、いつしか本物の音楽への情熱に変わることも珍しくありません。
ぜひ、お子様の年齢や性格にぴったり合った「弾けるバイオリンおもちゃ」を見つけて、親子で素敵な音楽の時間を楽しんでください。その小さなバイオリンから奏でられるのは、電子音や擦れた音かもしれませんが、子供の心の中ではきっと、世界一美しい音色が響いているはずです。


