バイオリン クロスの洗い方|素材別の注意点と松脂汚れの対処法

バイオリン クロスの洗い方|素材別の注意点と松脂汚れの対処法
バイオリン クロスの洗い方|素材別の注意点と松脂汚れの対処法
楽器・ケース・弦・ケア

バイオリンを練習した後、楽器についた松脂や手汗を拭き取る「クロス」。毎日の練習に欠かせないアイテムですが、使い続けていると黒ずんだり、ベタベタしたりしてきませんか?「このクロス、洗ってもいいのかな?」「どうやって洗えばいいんだろう」と悩んでいる方も多いはずです。

実は、汚れたクロスを使い続けることは、大切な楽器にとって良いことではありません。汚れた布で拭くことは、汚れを楽器に塗り広げているようなものだからです。しかし、洗い方を間違えるとクロスの吸水性が落ちたり、ゴワゴワになって楽器を傷つける原因になったりすることもあります。

そこで今回は、バイオリン用クロスの正しい洗い方を、素材別にていねいに解説します。マイクロファイバーやセーム革など、素材に合わせたお手入れ方法を知って、いつも清潔なクロスで楽器をケアしてあげましょう。松脂汚れの対処法や買い替えのタイミングについてもお話ししますので、ぜひ参考にしてください。

バイオリンのクロス、実は洗っても大丈夫?

「楽器用のクロスは洗ってはいけない」と思い込んでいる方もいるかもしれませんが、基本的には洗っても大丈夫です。というより、むしろ定期的に洗って清潔さを保つことが推奨されています。

なぜなら、クロスは使用するたびに松脂の粉、手汗、皮脂、ホコリなどを吸着しているからです。これらが蓄積した状態で楽器を拭くと、逆に汚れを付着させてしまったり、細かい砂ぼこりのようなものが研磨剤のようになってニスの表面を傷つけてしまったりする恐れがあります。

ただし、どんな洗い方でも良いわけではありません。クロスの素材には「マイクロファイバー」「セーム革(本革)」「綿(コットン)」などがあり、それぞれに適した洗い方や注意点があります。特にバイオリンのお手入れ用品として一般的な「セーム革」は、洗い方を間違えるとカチカチに硬くなって使い物にならなくなることもあるため、注意が必要です。

まずは自分の持っているクロスがどの素材なのかを確認してみましょう。タグがついている場合は洗濯表示をチェックするのが一番確実ですが、タグがない場合でも手触りや見た目で判断できることが多いです。次章からは、それぞれの素材に合った正しい洗い方を詳しく解説していきます。

ここがポイント

・汚れたクロスは楽器を傷つける原因になるため、洗濯が必要です。

・素材によって洗い方が異なるため、必ず確認してから洗いましょう。

・特に「セーム革」は扱いがデリケートなので注意が必要です。

なぜ汚れたクロスを使ってはいけないのか

汚れたクロスを使い続けることのデメリットについて、もう少し深く掘り下げてみましょう。私たちは普段、練習の終わりに「松脂」と「手垢」を拭き取ります。松脂は粘着性のある物質ですし、手垢には油分や塩分が含まれています。

これらが染み込んだクロスで楽器を拭くと、目には見えなくても、クロスの繊維の隙間が汚れで埋まってしまっています。すると、新しい汚れを吸着する力が弱まるだけでなく、繊維に固着した硬い松脂の粒子が、繊細なバイオリンのニスに細かい傷(スクラッチ)をつけてしまう可能性があるのです。

また、手汗を吸い込んだまま放置されたクロスは、雑菌が繁殖しやすく、嫌なニオイの原因にもなります。清潔なクロスを使うことは、楽器を美しく保つためだけでなく、衛生的にも非常に重要なことなのです。

「洗えるクロス」と「使い捨てクロス」の見極め

ほとんどの楽器用クロスは洗って繰り返し使えるように作られていますが、一部には使い捨てタイプや、特殊な薬剤が染み込ませてあるタイプ(ポリッシュ成分配合クロスなど)も存在します。

例えば、金属パーツを磨くための研磨剤が含まれているクロスや、ツヤ出し成分が含まれているクロスは、洗うとその成分が流れ落ちて効果がなくなってしまいます。こうした特殊なクロスは「洗わずに使い、汚れたら捨てる」のが基本です。

一方、バイオリンの日常ケアで使う「拭き上げ用」のクロス(何も染み込ませていない布)は、今回ご紹介する方法で洗うことができます。もしお手持ちのクロスがどちらかわからない場合は、パッケージの説明書きを確認するか、楽器店に問い合わせてみましょう。

素材の確認方法

お手持ちのクロスがどの素材か判断するための簡単な特徴を挙げておきます。洗い方を決める前の参考にしてください。

マイクロファイバー
現在最も主流な素材です。化学繊維(ポリエステルやナイロン)で作られており、スエードのように滑らかな手触りのものや、少しふんわりとしたタオル地に近いものなどがあります。吸水性が高く、乾きやすいのが特徴です。

セーム革(本革)
鹿の皮をなめして作られた天然素材です。非常に柔らかく、しっとりとした手触りが特徴です。色はクリーム色や薄いベージュ色のものが多く、楽器の艶出しや仕上げ拭きによく使われます。裏面に皮特有の繊維感があります。

綿(コットン)
ハンカチやTシャツのような、一般的な布の質感です。吸水性はありますが、マイクロファイバーほどの汚れ吸着力はありません。古くなった肌着などを切って代用している方もいるかもしれません。

【素材別】クロスの正しい洗い方

それでは、素材ごとに具体的な洗い方の手順を解説します。大切なのは「優しく洗うこと」と「洗剤成分を残さないこと」です。まずは最も一般的なマイクロファイバークロスから見ていきましょう。

1. マイクロファイバークロスの洗い方

マイクロファイバークロスは化学繊維でできており、比較的丈夫なので扱いやすい素材です。しかし、その特殊な繊維構造を壊さないために守るべきルールがあります。

用意するもの

・中性洗剤(おしゃれ着洗い用洗剤や食器用洗剤)

・洗面器またはバケツ

・ぬるま湯(30℃〜40℃くらい)

手順①:予洗いで表面のゴミを落とす
いきなり洗剤液につける前に、まずはクロスをパタパタと振ったり、水で軽くすすいだりして、表面についている大きなホコリや松脂の粉を落とします。これにより、洗浄効果が高まります。

手順②:洗剤液を作る
洗面器にぬるま湯を張り、中性洗剤を適量溶かします。洗剤の量は多すぎるとすすぎが大変になるので、少なめで十分です。粉末洗剤よりも液体洗剤の方が溶け残りがなく、繊維に入り込みやすいのでおすすめです。

手順③:優しく手洗い(押し洗い)
クロスを洗剤液に浸し、手で優しく押し洗いをします。ゴシゴシと強く擦り合わせると繊維を傷める原因になるので、掌で押したり離したりを繰り返して、繊維の中の汚れを押し出すイメージで洗いましょう。汚れがひどい部分だけ、指の腹で優しく撫でるように洗います。

手順④:しっかりとすすぐ
洗剤が残っていると、拭き取り性能が落ちたり楽器に変な成分がついたりする原因になります。水を何度か変えながら、泡が出なくなるまで徹底的にすすいでください。

手順⑤:脱水と乾燥
手で軽く絞るか、清潔なタオルの間に挟んで水分を吸い取ります。ねじって固く絞るのは繊維を傷めるので避けましょう。その後、風通しの良い日陰に干して乾かします。

2. セーム革(鹿革)の洗い方

セーム革は天然素材なので、マイクロファイバーよりもデリケートです。洗うと油分が抜けて硬くなりやすいため、少しコツがいります。「キョンセーム」などの高級品を使っている場合は、特に慎重に行いましょう。

手順①:ぬるま湯につける
40℃以下のぬるま湯を用意します。熱湯は革が縮んでしまうので絶対に使用しないでください。革全体に水分を吸わせて柔らかくします。

手順②:石鹸または中性洗剤で洗う
革専用の洗剤があればベストですが、なければ無添加の石鹸や中性洗剤を使用します。洗剤を泡立てて、革を優しく揉むように洗います。汚れが気になる部分は、革同士を優しく擦り合わせても構いませんが、力加減には注意してください。

手順③:すすぎと脱水
洗剤が残らないようにしっかりとすすぎます。脱水は、手で優しく握るようにして水を切るか、タオルドライを行います。ここでも「ねじり絞り」は厳禁です。

手順④:【最重要】半乾きの状態で揉む
セーム革を洗う上で最も重要なのが乾燥の工程です。濡れた革をそのまま干して完全に乾かすと、バリバリに硬くなってしまいます。
陰干しをして、8割くらい乾いた状態(少し湿り気がある状態)になったら、手で革を揉んでください。
揉むことで革の繊維がほぐれ、乾燥後も柔らかい状態を保つことができます。乾ききるまで何度か「干す→揉む」を繰り返すと、よりふわふわに仕上がります。

3. 綿(コットン)クロスの洗い方

綿素材のクロスやガーゼハンカチなどは、比較的簡単に洗うことができます。基本的には普段の洗濯物と同じように扱えますが、楽器用として使うなら気をつけたいポイントがあります。

洗濯機で洗う場合
洗濯機を使用しても問題ありませんが、必ず「洗濯ネット」に入れましょう。ネットに入れないと、他の洗濯物の糸くずやホコリが付着してしまい、楽器を拭くためのクロスなのに逆にホコリをつけてしまうことになりかねません。

手洗いの場合
マイクロファイバーと同様に、中性洗剤で押し洗いをして、よくすすいで干します。綿はシワになりやすいので、干す前にパンパンと叩いてシワを伸ばしておくと、乾いた後に使いやすくなります。

洗濯機を使う場合の共通注意点

どの素材のクロスであっても、もし洗濯機を使って洗うのであれば、「他の衣類と分ける」か、少なくとも「目の細かい洗濯ネットに入れる」ことを徹底してください。

衣類の繊維、髪の毛、ペットの毛などがクロスに付着すると、バイオリンのパーツに引っかかったり、拭き心地が悪くなったりします。特にマイクロファイバーは吸着力が強いため、水中に浮遊している細かいゴミを強力にキャッチしてしまいます。できれば手洗いが一番安心ですが、洗濯機を使うなら「単独洗い」が理想的です。

クロスの「松脂汚れ」はどうする?

バイオリン奏者にとって最大の悩みといえるのが「松脂の汚れ」です。弓で擦れた松脂の粉は、最初はサラサラしていますが、クロスで拭き取って時間が経つとベタベタと固着して黒ずんできます。この汚れは、普通の洗濯できれいに落ちるのでしょうか?

松脂は完全には落ちないことが多い

残念ながら、一度クロスにこびりついた黒い松脂汚れは、洗濯しても完全には落ちないことがほとんどです。

松脂は樹脂(油溶性の汚れ)なので、水だけでは落ちません。洗剤を使えばある程度は分解されますが、繊維の奥に入り込んだ粘着質の松脂は非常に頑固です。無理に落とそうとして強い洗剤を使ったり、ブラシで擦ったりすると、クロスの繊維そのものを傷めてしまいます。

洗濯をすると、表面のベタつきや粉っぽさは取れてさっぱりしますが、黒いシミのような跡は残ることが多いです。「シミが残っていても、触ってベタベタしなければOK」と割り切るのが、精神衛生上も良いでしょう。

頑固な松脂汚れへの対処法

それでもどうしても松脂汚れを落としたい場合は、以下の方法を試してみることができます。ただし、生地への負担が大きいため、自己責任で行ってください。

固形石鹸(ウタマロなど)を使う
襟汚れなどを落とす強力な固形石鹸を、濡らしたクロスの汚れた部分に塗り込み、少し時間を置いてからもみ洗いします。中性洗剤より洗浄力が高いため、汚れが落ちやすくなります。

アルコール(エタノール)を少量使う
松脂はアルコールに溶ける性質があります。汚れた部分に消毒用アルコールを少量垂らし、なじませてから洗剤で洗うと溶け出すことがあります。
※注意!
アルコールはバイオリンのニスを溶かしてしまう危険な物質です。クロスをアルコールで洗浄した場合は、完全に成分がなくなるまで徹底的にすすぎ、完全に乾燥させてから楽器に使用してください。残留していると楽器を傷める大惨事になります。

松脂用と本体用を分ける重要性

松脂汚れが落ちにくいからこそ、強くおすすめしたいのが「クロスの2枚使い」です。

1枚目:松脂拭き取り専用クロス
弦や弓のスティック、指板の先など、松脂の粉がたくさんついている部分を拭くためのクロスです。これは「汚れるもの」と割り切って使います。黒ずんできても、ベタつきがひどくなるまでは使い続けます。

2枚目:本体・手汗拭き取り用クロス
松脂がついていない、楽器のボディ(ニス部分)、あご当て、ネックなどを拭くためのきれいなクロスです。こちらは常に清潔を保ちたいので、こまめに洗濯をします。

このように用途を分けることで、楽器全体に松脂を塗り広げてしまうのを防げますし、本体用のクロスを長くきれいに保つことができます。もし現在1枚ですべて拭いている方は、ぜひ今日から2枚に分けてみてください。

洗う頻度と買い替えのタイミング

「どのくらいの頻度で洗えばいいの?」という疑問もよく聞かれます。練習量や環境によっても変わりますが、目安を知っておくことで快適に使い続けることができます。

洗う頻度の目安

本体・手汗用クロス:1週間〜1ヶ月に1回
手汗や皮脂は時間が経つと酸化し、雑菌が繁殖します。毎日練習する人なら1〜2週間に1回程度、週末だけ練習する人なら月に1回程度を目安に洗うと良いでしょう。ニオイが気になったり、拭いた後に楽器がスッキリしない感じがしたら洗い時です。

松脂用クロス:汚れが気になったら(数ヶ月に1回〜)
松脂用クロスは、洗うと逆に繊維に松脂が広がって全体がゴワつくこともあります。そのため、あまり頻繁に洗わない人も多いです。「粉をはたいても落ちない」「ベタつきがひどい」「拭いた場所が逆に汚れる」と感じたら、洗うか、もしくは買い替えを検討しましょう。

買い替えのサイン

どんなに丁寧にお手入れしていても、クロスは消耗品です。以下のような状態になったら、新しいものに交換しましょう。

  • 吸水性が落ちた
    洗っても手汗などを吸い取らなくなった。
  • 生地がゴワゴワ・カサカサしている
    繊維が硬化したり、松脂が固着して硬くなったりしている状態。これで拭くと楽器に傷がつきます。
  • 毛羽立ちがひどい
    拭いた後に細かい繊維くずが楽器に残るようになった。
  • 汚れが落ちない
    洗濯してもベタつきや臭いが取れない。

古いクロスを無理に使って数百万円、数千万円(あるいは数十万円であっても大切な)楽器のニスを傷つけてしまうより、千円〜二千円程度のクロスを新調するほうが、長い目で見れば賢い選択です。

長く使うためのお手入れポイント

最後に、クロスを長持ちさせ、かつ楽器を守るための「やってはいけないこと」や「ちょっとしたコツ」をまとめました。特にマイクロファイバークロスを使っている方は必見です。

柔軟剤は絶対に使わない(マイクロファイバー)

洗濯をする際、ふわふわに仕上げたいからといって柔軟剤を使うのはNGです。

柔軟剤は、繊維の表面を油分の膜でコーティングすることで手触りを良くする仕組みです。しかし、マイクロファイバークロスの命である「超極細繊維の隙間」をこのコーティング剤が埋めてしまうと、吸水性や汚れを吸着する力が劇的に低下してしまいます。

一度柔軟剤を使ってしまうと、何度か洗っても元の吸水力には戻りにくいです。もし間違って使ってしまった場合は、洗剤だけで数回洗い直すことで多少回復することもありますが、基本的には「柔軟剤なし」で洗うことを覚えておきましょう。

漂白剤や乾燥機も避ける

漂白剤(塩素系・酸素系ともに)
生地を傷めたり、変色させたりする原因になります。特にセーム革に漂白剤は厳禁です。

乾燥機
マイクロファイバーは熱に弱く、乾燥機の高温で繊維が溶けたり変形したりする恐れがあります。セーム革も熱で縮んで硬くなります。必ず直射日光の当たらない風通しの良い場所で「自然乾燥(陰干し)」をしてください。

保管時は楽器に直接触れさせない工夫を

洗ったきれいなクロスであっても、ケースの中にしまう時は注意が必要です。楽器のニスは非常にデリケートで、長時間同じ素材(特に化学繊維や染料の入った布)が触れていると、化学反応を起こして「ケース跡」や「布の跡」がニスについてしまうことがあります。

最近のケースは楽器の上にクロスを掛けることを想定した「ブランケット(カバー)」がついていることが多いですが、クロスを収納する際は、楽器本体(特に表板のニス)に直接長時間触れないようなポケットやスペースに入れるのが一番安心です。

もし楽器を包むためにクロスを使っている場合は、必ず楽器用の安全な素材(シルクや綿など)を選び、汚れた面がニスに当たらないように気をつけましょう。

まとめ

まとめ
まとめ

バイオリンのクロスは、正しい方法であれば洗って繰り返し使うことができます。いつも清潔なクロスを使うことは、楽器を美しく保つだけでなく、音色を守ることにもつながります。

今回の記事の要点を振り返りましょう。

・クロスは素材(マイクロファイバー、セーム革、綿)によって洗い方を変える。

・マイクロファイバーは「柔軟剤NG」「熱NG」。中性洗剤で優しく手洗いが基本。

・セーム革は洗った後、半乾きの状態で「揉む」ことで柔らかさを取り戻す。

・松脂汚れは完全には落ちにくい。松脂用と本体用でクロスを2枚使い分けるのがベスト。

・ゴワゴワしたり吸水力が落ちたりしたら、楽器のためにも新しいものに買い替える。

練習後のひと拭きは、楽器への感謝を伝える大切な時間です。その時間を支えるクロスも、たまには優しく洗ってリフレッシュさせてあげてくださいね。きれいなクロスで磨けば、次の練習もきっと気持ちよく始められるはずです。

タイトルとURLをコピーしました